2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12689
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
若林 チヒロ 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (40315718)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アフリカ / 日本 / 移民 / 生活 / 外国人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アフリカ人と結婚した日本人のうち、夫の母国に移住した人々のライフヒストリーを記録することを目的としている。アフリカからのニューカマーはナイジェリアとガーナが中心であり、本研究ではガーナ共和国を対象としている。また事例を位置づけるための全体像を把握する目的で、各種の政府統計から関連のデータを収集・整理することも研究課題の一つとしている。 今年度は、国内および移住先での面接調査とコミュニティでのフィールドワーク、面接記録の整理、ニューカマーアフリカン関連年表の作成、各種統計からみたアフリカ関連のデータの整理と図表化、研究会の開催などを行った。また今後の研究の展開を検討するため他の専門領域の研究者との検討会を行った。 ガーナ共和国への日本人妻子の移住は既に四半世紀に及んでおり、結婚後比較的早い段階で移住した人々、子の教育を考慮して移住した人々、経済的事情や生活基盤の整備から移住した人々、中高年に至り退職後の老後生活を母国で過ごしたいという夫の意向から移住を考慮する人々、現地や第三国で結婚して移住生活を送る人々等、多様なパターンがある。移住したアフリカ系日本人である子らも、現地での就学を終えて社会に出始めている。今年度はこれらケースを整理した。 政府統計については、アフリカ地域のデータは個別に公表されないものが多く国籍・地域別のオーダーメイド集計も検討していたが着手できなかったため、既存の統計の図表化を図った。西アフリカ出身者にみられる特徴は、同様の経過で来日したアジア等からのニューカマーと比しても顕著に偏ったものであり、在留外国人のなかでも独特の滞日生活を送ってきた人口集団である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度実施できなかった現地調査を今年度は実施することができ、その後の経年変化に関する事項も追加して調査結果を加筆修正した。国内においても帰国者および一時帰国時を対象に調査を進めることができ、新たなライフステージに入った人たちの状況について追記することができた。当初は主に配偶者である日本人妻を中心に計画していたが、子など周囲へも対象を広げてヒアリングを実施した。とくにアフリカ系日本人の生活が多様化していることから二世を対象にしたヒアリングを追加で実施した。政府統計については、アフリカ地域のデータは個別に公表されないものが多いためオーダーメイド集計も検討していたが着手できなかった。統計の実施年・公表年等を考慮して、本研究期間内で実施するかは次年度検討する。 以上の理由から、今年度はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究内では研究成果の公表が不十分であるため、次年度はこの点に重点を置いて進める。結果の公表に際しては個人情報の保護にとくに留意する必要がある。また、現在日本に関わるアフリカ系家族の多様化が生じていることを考慮すること、他のアフリカやアジア地域等への移住者とも比較検討しつつ特徴を明らかにしていくことなども今後の課題である。これらの点を考慮して今後の研究推進体制を整える。 政府統計から現状を把握する研究については、在留者や移住者の基本的属性や、結婚、離婚、出生、死亡などの人口動態、就労等の生活状況の特徴をより詳細に把握する統計にも着手する必要がある。日本の統計だけでなく国際機関や各アフリカ諸国の統計から得られる資料について検討する必要がある。ただし国内外いずれの統計においても実態との齟齬を推定して使用する必要があり、統計の質の検討も今後の研究推進上の課題である。
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Causes of Carryover |
研究はほぼ計画通りに実施済みであり、研究経費についての残額もわずかである。しかし、当初予定していた結果の公表を次年度実施に変更し、結果検討会も数回予定しているため、残額はわずかであるが次年度に研究費を繰り越すことにした。
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