2017 Fiscal Year Research-status Report
エビ由来タンパク質の低アレルゲン化技術の開発とアレルギー体質改善への可能性
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16K12707
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
菰田 俊一 宮城大学, 食産業学群(部), 准教授 (50404843)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 甲殻類アレルギー / 低アレルゲン化 / メイラード反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度に策定したアレルゲンタンパク質の反応条件により、エビ由来のアレルゲンタンパク質(トロポミオシン)の糖類による化学修飾を行った。また、化学修飾されたアレルゲンタンパク質について、抗体反応性を評価した。さらに、マウスを使った動物レベルの試験について、予備的な検討をはじめた。 化学修飾の方法としては、メイラード反応を用い、単糖類のリボースまたは多糖類のガラクトマンナンをアレルゲンタンパク質に結合させ、抗体反応性を抑制する可能性を評価した。単糖類のリボースは最大7時間の反応で十分に糖-タンパク質複合体を形成することが分かったが、多糖類のガラクトマンナンの場合には、反応のスピードが遅く1週間程度の反応時間が必要であった。また、リボースを使った場合の抗体反応性は、複合体形成に伴って、低く抑えられることも分かった。一方、多糖類のガラクトマンナンとの複合体は、複合体を形成すると、一旦不溶化し、その後の解析等が妨げられるととも分かった。 マウスを用いた予備試験では、アレルギー化したマウスに、リボース(単糖類)との複合体、またはガラクトマンナン(多糖類)との複合体を腹腔内投与することにより、血中のヒスタミン濃度が影響を受けるか評価を行った。この結果、両複合体共に、血中のヒスタミン濃度を低く抑える傾向があることが分かった。ただし、最終的な結論を得るためには試験を繰り返し統計的な有意差を示す必要がある。 今回の研究を進める中で、解決すべき個所が見出された。1. メイラード反応の際、アレルゲンタンパク質が多量化し、抗体反応性を高めること。2. ガラクトマンナンが複合体を形成すると不溶化し、その後の解析等に影響を与えること。3. 上記1.および2.が理由で、反応後の精製が必要であること。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概ね順調に進んでいるが、反応生成物の精製作業で時間を要している部分があり、この部分で研究が若干遅れている、具体的には、糖とタンパク質の複合体ができる際に、タンパク質の二量体、三量体が生成しすること、また、未反応の糖類(リボースおよびガラクトマンナン)やタンパク質が残存することで、後のアレルゲン性評価の際に妨げになることが懸念された。文献上または経験上、甲殻類アレルゲンのトロポミオシンタンパク質は、複合体を形成すると、そのアレルゲン性が却って上昇することも知られており、純粋なメイラード反応物のアレルゲン性を測る際には目的物以外の不純物を取り除く必要がある。また、一方で、多糖類のガラクトマンナンを用いたアレルゲンタンパク質の化学修飾では、上述の通り、水に溶けにくくなることがわかり(不溶化)、複合体形成の確認や精製作業が困難になっていた。現在、これらの部分を解決すべく、各種のクロマトグラフィーやキット類を利用しながら検討作業をすすめているが、この部分で時間を要している。また、H29においては、予備的にアレルギーモデルマウスを作成し、血中ヒスタミン濃度を測定することにより、投与した糖-タンパク質複合体のアレルゲン性を評価した。ただし、その際用いた試料は、簡易的に調製したものであったので、多くの不純物が含まれていた。このため、再度試料を調製し、試験を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、当初計画通りにアレルギー疾患モデルマウスを用いたアレルゲン性評価と長期投与による免疫寛容誘導活性評価を行う。ソバアレルゲン、スギ花粉アレルゲンに関する先行研究によると、ガラクトマンナン等のマンノース残基を含む多糖類をアレルゲンタンパク質と結合させて、長期投与を行うと、細胞表面のマンノースレセプターがこれを認識し、脱感さが誘導される、とされている。このことから、今回本研究で対象としているエビ由来のアレルゲンに関しても、同様の効果があることが期待され、本研究にてこれを明らかにする。ただし、現在試料調製作業の中で2つの箇所について、解決に向けて取り組みを進めている。具体的には、メイラード反応生成物の精製と不溶化したガラクトマンナン複合体の可溶化である。前者については、各種クロマトグラフィーによる精製作業を進め、後者についてはキット類を用いた検討を行う。
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Causes of Carryover |
マウス関連の動物実験実施が、計画よりも遅れ、次年度に実施することとなった。このため、マウス関連またはマウス由来の細胞実験に掛かる経費の執行も、年度を超えて次年度に繰り越すこととなった。なお、H30年度は、再現性を確認するための動物実験問含め、数多くの動物実験を行う予定であり、当該の実験に関わる経費も相応の金額が執行される予定である。
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Research Products
(4 results)