2018 Fiscal Year Research-status Report
エビ由来タンパク質の低アレルゲン化技術の開発とアレルギー体質改善への可能性
Project/Area Number |
16K12707
|
Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
菰田 俊一 宮城大学, 食産業学群(部), 准教授 (50404843)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 甲殻類アレルギー / エビ / アレルギー / トロポミオシン / 低アレルゲン化 / メイラード反応 / 多糖類 |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに、ブラックタイガー種のエビから粗タンパク質を抽出し、この中から主要な耐熱性アレルゲンタンパク質であるトロポミオシンタンパク質(TM)を取り出してた。次に、メイラード反応を用いて、TMを化学修飾(糖修飾)した。反応基質として単糖類のリボース(R)及び多糖類のガラクトマンナン(GM)を用いた。反応の結果、TMとリボースは約7時間の反応で複合体(TM-R)を形成し、ガラクトマンナンとの複合体(TM-GM)の生成には約7日間を要することが示された。 続いて、TM-RおよびTM-GMのアレルゲン性を評価するため、これらの精製作業を行った。反応原料の糖類や未反応のTMは水溶性であるのに対し、生成したTM-糖複合体は水に対して難溶性を示したため、水による洗浄を行い、これを簡易精製法とした。電気泳動によりこれらの生成物を確認したところ、反応前に比べて、反応生成物の分子量は大幅に増加し、単純な糖修飾に加えてタンパク質同士が架橋(クロスリンク)を形成し、水に対して不溶化していることも示された。 糖修飾TMのアレルゲン性は、ドットブロット法およびモデルマウスを用いた発症試験を用いて評価した。この結果、TMが糖修飾を受けると、抗体認識能が下がること、また、アレルギーに罹患したモデルマウスに糖修飾TMを投与したとき、未修飾のTMと比べて発症メディエーターであるヒスタミン血中濃度が上昇抑制されることを見出した。これらのことは、TMを糖修飾することにより、アレルゲン性を低減化できることを示している。 さらに、糖修飾TMを長期投与したときの、関連シグナルの挙動を確認した。今回の長期投与試験は4週間で行った。この結果、投与の前後で血中のIgE濃度の低下傾向が見られた。ただし、有意差を確認するまでには至らなかったため、投与期間の見直しなど条件を設定し、再現性を確認する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アレルゲンタンパク質を精製する中で、当初想定していた糖-タンパク質複合体とは別のタンパク質(タンパク質同士のクロスリンク)が生成していることがわかった。むしろ、この新たに生成したタンパク質が主要な生成物であり、当初、想定していた生成物がマイナーなものでああったため、生成の方法や調整に時間を要してしまった。関連する動物実験に関しては、当初マイナーな生成物を使いながら進めてきたが、試料そのものを見直したため、遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究自体はやや遅れ気味であるが、研究結果は概ね想定通りである。動物実験による低アレルゲン化評価についても良好な結果を得ている。一方で、糖修飾したアレルゲンタンパク質を長期投与したときの関連シグナル解析については、再度条件検討を行う必要がある。これまで、本研究ではモデルマウスに対する長期投与を4週で行っていた。当該関連の先行研究(別のアレルゲンタンパク質)では、4から8週の投与で体質が元に戻り、T細胞の分化の様子も正常に近い状態になるとのことであった。このことを参考に、本研究は先ずは4週で効果があるか検討を行った。動物がアレルギー状態になると血中にアレルゲン特異的なIgEが生成するが、アレルギー状態から脱する(脱感さ)とIgE濃度が低下する。これまでの本研究における結果としては、4週の投与後、特異的血中IgEはやや減少していたが、有意差を確認するまでには至っていない。腎臓を得るために、と殺を伴う実験が必要であり、一旦4週で試験を行ったが、やはり、より長期の投与が必要であることが分かった。8週を目途に投与の条件を再検討し、再現性の確認も含め、より信頼性の高い結果を導く予定である。
|
Causes of Carryover |
アレルゲンタンパク質の化学修飾を行う過程で、当初想定していた化学修飾タンパク質の他に新たな主要タンパク質が生成した。この新たな化学修飾タンパク質の取扱い等に、時間がかかり、研究全体がやや遅れた。次年度は、本年度実施を予定していた動物実験の一部を継続して実施するため、本年度使用予定分の一部を次年度に移行する。
|
Research Products
(4 results)