2016 Fiscal Year Research-status Report
和食から発がん抑制効果を最大に得るためのヒト生体内利用能を考慮した摂取様式の特定
Project/Area Number |
16K12708
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
中村 考志 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (90285247)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ダイコン / がん / 尿中マーカー / 和食文化 / MTBITC |
Outline of Annual Research Achievements |
大根は世界消費量の90%を日本が占めている和食の主要な野菜のひとつであり,特に大根をおろして生で食べる食文化は日本独特のものである.大根特有の辛み成分である4-methylthio-3-butenyl isothiocyanate(MTBITC)は大根に破砕(おろす,切断)等により損傷を加えることで生成する物質である.MTBITCを経口摂取した動物は膵臓がんと食道がんの抑制効果を示し,ヒトの疫学調査では大根摂取が食道がんのリスク低下因子であることが明らかとなっている.大根おろしをヒトが摂取したときには吸収されたMTBITCが肝臓で代謝されMTBITC-NAC(N-acetyl-S-(N-4-methyltio-3-butenyl thiocarbamoyl)cysteine)として尿中に排泄されるためヒト尿中のMTBITC-NAC排泄量をMTBITCの吸収率の指標とし,大根を摂取したときのMTBITCの吸収率の個人差と変動を解析した.また吸収されたMTBITCは肝臓で4段階の反応を経て最終代謝物であるMTBITC-NACとして尿中に排泄されると報告されているが,MTBITC-NACの前駆体が尿中に排泄されている場合は,MTBITC-NACとその前駆体の総量を指標として評価すべきである.しかし,MTBITC-NACの前駆体はこれまでに化学合成されておらず,尿中への排泄の有無は不明である.本研究ではMTBITC-NACの前駆体のひとつであるS-(N-4-methyltio-3-butenyl thiocarbamoyl)cysteine(MTBITC-Cys)を得るための化学合成法を確立し,得られたMTBITC-Cysを標準品として,ヒトがMTBITCを摂取したときのMTBITC-Cysの尿中への排泄の有無もあわせて検討した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MTBITCの生体内利用能の測定を20名の被験者で8か月間おこない,吸収率に個人差があることがわかりつつある.また,MTBITC-Cysの化学合成に成功し,得られたMTBITC-Cysを標準品として,吸収率を補正する方法も確立しつつある.このため当初予想としていた実験結果を得られる目途が立ちつつあるため,研究は順調に進展していると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
MTBITCの生体内利用能の測定に参加する被験者をさらに増やすことと,28年度に参加した被験者のうち可能な被験者には29年度も継続的に試験をして,吸収率の傾向を観察する.これにより,より確証の高いデータを作成してゆく予定である.
|
Causes of Carryover |
ヒトを対象とした試験に使用する物品費の支出額が,当初予定していた額よりも少額であったために当該助成金が生じた.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該助成金の額は29年度に必要な物品費に充てる予定である.
|
Research Products
(1 results)