2016 Fiscal Year Research-status Report
風味表現を学習したセンサーは、人の表現にどこまで近づけるのか?
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16K12709
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
藤岡 宏樹 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (90392381)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | センサー / 香り / コーヒー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、センサー装置に風味表現のトレーニングを行ない、香りを客観的に数値化する新しいシステム開発を目的としている。この目的を達成するため、嗅覚センサーに食品の「フレーバーホイール(風味表現)」を学習させ、さらに人の嗅覚を模倣するためのアルゴリズムを新たに構築、人に近い表現を出力させることに挑戦する。高精度に香りを表現できる嗅覚センサーが構築できれば、味覚センサーとの組み合わせで風味表現の多くをカバーし数値化できる。食品などの風味評価、嗜好の分析など、産業・学術分野に新しい知見や測定法をもたらすことが期待できる。 本年度は(1)コーヒーの経時的変化、及び(2)産地の異なるコーヒーの特徴について、センサーで香りを表現させる検討を試みた。 コーヒーの経時的変化の実験では、ドリップ直後のコーヒーと、保温ポット内で一定時間静置したものとをセンサー装置で測定、比較した。これらのセンサー値と、予め学習させておいた香りのセンサー値を比較することで類似度を求めた。プレリミナリーなデータではあるが、保温ポット内で一定時間静置したコーヒーの一部では、イチゴなどフルーツ系の香りの軸等で類似度が増加する傾向が見られた。一方で、キノコの香り軸では、相対的に変化は少なかった。コーヒーを長時間保温した場合、有機酸などの成分が生成され、酸味を強くすることが知られている。本検討からは、一部のコーヒーではあるが、経時的変化によるフルーツ様の香りの増加も風味の変化に貢献している可能性が示唆された。 また、産地の異なるコーヒーの特徴を表現させる実験では、フルーティーやナッツ様の表現軸の構築に取り組んだ。上記と同様にフルーツ系の香りでスクリーニングを試みたが、フルーティーという特徴を表現する軸は本年度中には構築できなかった。一方、ナッツ様の香りについては、一部産地のコーヒーで特徴として見つけ出せる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたコーヒーの表現軸の構築が本年度中に完了しなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、センサーによるコーヒーの香り表現に取組み、経時的変化や産地の特徴を表す軸の構築を試みた。産地の特徴を表現する軸は開発途上の段階にあり、今後、ガスクロマトグラフィなどの測定装置を使った香り成分の裏付けや、人の嗅覚による官能評価との比較を進めるなど、センサー表現の精度を上げる必要がある。また、次年度は、清酒の表現軸について検討することを計画しており、清酒で使われるフルーティーなどの表現軸をコーヒーの表現に応用することについても検討したい。
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Causes of Carryover |
コーヒーの香り表現を構築するための試薬費用として使用する予定であったが、主な検討内容の一つであるフルーティーの表現軸の検討に時間がかかり、当初の計画通りに進まなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分の助成金と合わせて、主として香りの表現軸の構築に必要な試薬の購入、及び官能評価との比較用の費用として使用したいと考えている。
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