2016 Fiscal Year Research-status Report
科学的根拠に基づいた「こく」の定義・見える化の確立と国際化
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16K12710
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
西村 敏英 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (70180643)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コク / 植物ステロール / 香り保持効果 / コクの国際化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科学的根拠に基づいた「こく」(以下コク)の定義を確立し、国際化することを目的とする。申請者が提案したコクの定義を明確にするためには、客観的な評価基準を作成する必要がある。これを達成するため、これまで研究がなされなかった香りの持続性と広がりによるコク付与効果に着目し、タマネギ中の香りの持続性と広がりに寄与する成分と特徴並びに寄与物質の構造を解明するための実験を行った。 平成28年度では、タマネギ搾汁液の濃縮物をコンソメスープに添加することにより、コンソメスープの香りの持続性や広がりが強くなることを明らかにした。また、この効果がタマネギ濃縮物の固形分によることが明らかとなったので、固形分の構造解析を行った。固形分の1つは、植物ステロールであることが明らかとなった。ガスクロマトグラフィーで解析した結果、植物ステロールであるβ‐シトステロールが、タマネギの主要香気成分であるメチルプロピルジスルフィドと結合し、コクの要素である香りの持続性や広がりに寄与していることを明らかにし、その成果を論文化した。本論文は、コクを世界に発信した最初のものであり、その意義は極めて大きい。次に、粘性がコクの形成や増強に及ぼす影響を解明するため、備品として購入した音叉振動計を用いて、異なる濃度の増粘剤を含む溶液を測定した。その結果、官能評価で差がわかる低粘度溶液の粘度の違いを数値で客観的に表すことが可能であることが明らかとなった。さらに、日本初のコクを海外に発信するため、申請者はコク懇談会を発足し、コクの定義をまとめると同時に、第1回コクの国際シンポジウムを開催した。今後は、毎年講演会を開催し、隔年で国際シンポジウムを開催することを決定している。 このように、平成28年度は、本研究申請書に記載した目的を達成するために設定した目標を着実に進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、科学的根拠に基づいたコクの定義を確立し、国際化することを目的としている。申請者が提案した「こく」の定義を明確にするためには、客観的な評価基準を作成する必要がある。これを達成するため、これまで研究がなされなかった香りの持続性と広がりによる「こく」付与効果に着目し、タマネギ中の香りの持続性と広がりに寄与する成分と特徴並びに寄与物質の構造を解明するための実験を行った結果、香りの保持効果を有する植物ステロールを同定し、その効果を検証した。 また、食べ物の粘度の測定とコクの関連性に関する研究はこれまで全くなされていない。本研究で申請した音叉振動計による粘度の測定を行った結果、官能評価で違いが判る低粘度のスープの粘性の違いを本機器で客観的に測定することができる可能性が示唆できた。 さらに、コクの国際化に関しては、既に第1回のコク国際シンポジウムを開催しており、海外研究者とコクの現象に関してディスカッションをしている。この国際化の推進に関しては、コクの懇談会を発足し、既に今後の講演会や国際シンポジウムの開催を計画している。 このように、平成28年度は、本研究申請書に記載した目的を達成するために設定した目標を着実に進めており、順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では、タマネギに含まれる植物ステロールが香り保持効果を有し、コクの形成並びに増強効果を有する物質として特定されたので、今後は、その作用メカニズムの解明並びに食品への添加による応用例を探索する。具体的には、①実際の食品を用いたコク付与効果の検証と客観的評価システムの応用において、液状食品(野菜スープ)、固形状食品(ポークソーセージ)を試作し、タマネギ由来のコク増強物質を添加した効果を調べる。また、②コク研究会の立ち上げとコクの定義化では、申請者がヘッドとなり、「コク研究会」を創設する。各方面の専門家に協力を頂きながら、コクの定義を明確化する。さらに、国際シンポジウムを開催し、コクの定義を外国人と意見交換会を実施し、国際化に繋げてゆきたい。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、それまでのコクに関する実験で使用した試薬や試料が大量に残っていたため、申請備品である「音叉振動計」以外の物品の購入を必要としなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の未使用金額は、平成29年度の使用額と合わせて、本研究に用いる試薬やサンプルの購入に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] “Phytosterols in onion contribute to a sensation of lingering of aroma, a koku attribute”2016
Author(s)
Nishimura, T., Egusa, S. A., Nagao, A, Odahara, T., Sugise, T., Mizoguchi, N., and Nosho, Y.
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Journal Title
Food Chemistry
Volume: 192
Pages: 724-728
Peer Reviewed
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