2017 Fiscal Year Research-status Report
科学的根拠に基づいた「こく」の定義・見える化の確立と国際化
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16K12710
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Research Institution | Kagawa Nutrition University |
Principal Investigator |
西村 敏英 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (70180643)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コク / 低粘度溶液 / 粘度 / 味の持続性 / コクの国際化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科学的根拠に基づいた「こく」(以下コク)の定義を確立し、国際化することを目的とする。申請者が提案したコクの定義を明確にするためには、客観的な評価基準を作成する必要がある。これまで、タマネギの香りの広がりと持続性に寄与する物質を同定した結果、タマネギに存在するβ‐シトステロールがコクの増強に寄与していることが明らかとなった。また、ポークソーセージに添加されているうま味物質が、食べ物の味わいの広がりや持続性を増強させるコク増強物質であることを示した。さらに、備品として購入した音叉振動計を用いて、異なる濃度の増粘剤を含む溶液を測定し、官能評価で認識できる低粘度溶液の粘度の違いを数値で表すことが可能であることを示した。 そこで、平成29年度は、低粘度溶液を用いて、温度の違いによる溶液の粘度変化を測定し、その特性を詳細に調べた。その結果、これらの溶液は温度が上昇するに連れ、音叉振動計による粘度の値が低下することが判明した。次に、0.1 %キサンタンガム溶液を用いて、粘度が上昇した時の味の感じ方への変化を調べた結果、粘度が上がると、味の感じ方が弱くなる傾向が認められた。また、味質によって、味の持続性が強くなるものがあり、粘度の上昇がコクの持続性を強くする可能性が示唆された。呈味物質をキサンタンガム溶液に添加すると、甘味物質では粘度の変化が認められなかったが、酸味、塩味及びうま味の溶液では、粘度が低下する現象が認められた。 また、平成29年度には、申請者はコク研究会を発足し、日本初のコクを海外に発信する試みもスタートさせた。英語並びに日本語で、コクに関する専門書を刊行する準備を行った。 このように、平成29年度は、本研究申請書に記載した目的を達成するために設定した目標を着実に進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、科学的根拠に基づいたコクの定義を確立し、国際化することを目的としている。特に、食べ物の粘度の測定とコクの関連性に関する研究はこれまで全くなされていない。本研究で申請した音叉振動計による粘度測定を行った結果、官能評価で違いが認められる低粘度スープの粘性の違いを本機器で客観的に測定することができると同時に、粘度の上昇が味の感じ方の持続性を強くすることを初めて示すことができた。 また、コクの国際化に関しては、既に第1回のコク国際シンポジウムを開催しており、海外研究者とコクの現象に関してディスカッションをしている。この国際化の推進に関しては、コクに関する英語の専門書“Koku attributes-Food science and Biology”を平成30年度に出版する予定である。コク研究会を発足し、既に講演会や国際シンポジウムの開催を計画している。 このように、平成29年度は、本研究申請書に記載した目的を達成するために設定した目標を着実に進めており、順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、うま味物質が食べ物の口中香の感じ方の強度を高める効果を調べるため、ポークソーセージを取り上げ、その効果を調べた結果、うま味物質の添加量が少ないソーセージでは、味わいの広がりや持続性が弱くなり、コクの強度が低下することが判明した。また、低粘度溶液で、粘度上昇が味の持続性(コクの要素)を上昇させることが明らかとなった。 そこで、30年度では、「コクの見える化」に繋がる次の2つを具体的なテーマとして研究を遂行する。1つは、固形食品であるソーセージにおいて、脂肪がコクの増強にどのように関わっているかを調べると同時に、客観的指標を作成する。2つ目は、液状食品として、低粘度のスープを用いて、粘度が味の持続性を高めるメカニズムを解析する。また、「コクの国際化」に関しては、コク研究会主催の第2回コクの国際シンポジウムを開催する予定である。さらに、コクに関する英語の専門書”Koku attributes-food science and biology"を刊行する準備をしている。
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度は、大学を異動したので、研究時間が十分に確保できなかった。また、それまでのコクに関する実験で使用した試薬や試料が残っていたので、物品購入費用がわずかであった。
(使用計画)平成29年度の未使用金額は、平成30年度の使用額と合わせて、本研究に用いる試薬やサンプル購入に充当する計画である。
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Research Products
(4 results)