2017 Fiscal Year Research-status Report
母乳中ケモカインCCL25が有する新生児期の骨形成促進効果のメカニズム
Project/Area Number |
16K12720
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
雪田 聡 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80401214)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茶山 和敏 静岡大学, 農学部, 准教授 (30260582)
中村 浩彰 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50227930)
二宮 禎 日本大学, 歯学部, 准教授 (00360222)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ケモカイン / CCL25 / 骨形成 / 母乳 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケモカインCCL25は胸腺および小腸において免疫に影響を与えることが示されてきた。申請者らのグループはCCL25が乳汁に含まれることを明らかにし、さらに、CCL25を含有した人工乳による人工哺育実験系を確立し、母乳中CCL25が免疫器官の形成を促進することを示唆してきた。しかし、乳幼児の骨形成に与える影響についてはこれまで明らかになっておらず、母乳中ケモカインが骨形成に重要な因子か検討することとした。 これまでに、CCL25を含有した人工乳を用いた人工哺育の結果から、対照群と比較して大腿骨の骨長、破骨細胞および骨芽細胞の細胞数、遺伝子マーカーの発現量が増大することを明らかにしてきた。一方で、マイクロCTによる骨形態計測には明確な変化は認められなかった。そこで、今年度は人工哺育期間の延長を試みたが大変困難であり、10日間以上の哺育期間の延長はできなかった。そこで、人工哺育と並行してCCL25遺伝子欠損マウスを用いて解析を行った。その結果、10日齢マウスでは骨格異常等は認められず、大腿骨および脛骨の長さにも大きな差は認められなかった。さらに組織学的な検討を行ったが、野生型と比較して明確な差異は認められなかった。一方で、10週齢マウスにおいては骨格異常および長管骨の長さには大きな差は認められなかったものの、野生型と比較して破骨細胞数の増加および成長板軟骨の縮小が認められた。この結果は、CCL25遺伝子は成獣マウスの骨形成において、破骨細胞分化の抑制および成長板の形成促進または肥厚化に関わることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、母乳中CCL25の骨成長に対する効果を明らかにするため、人工哺育期間を延長して離乳まで飼育することを試みた。しかし、死ぬマウスが続出したため、10日間以上の人工哺育は大変困難であった。そこで、人工哺育の条件検討と並行してCCL25遺伝子欠損マウスを用いて解析を行った。CRISPR/Cas9により全身性にCCL25遺伝子を欠損したマウスは形態形成に大きな異常はなく、繁殖可能であった。10日齢および10週齢マウスの脛骨および大腿骨を採取してその長さを計測した結果、明確な差は認められなかった。さらに、脛骨の薄切切片を作成してカテプシンKのタンパク局在を指標に破骨細胞数を計測した。その結果、10日齢では明確な差は認められなかったものの、10週齢では単位当たりの破骨細胞数が有意に増加していた。さらに、アルシアンブルー染色により軟骨組織を染色して成長板軟骨領域を野生型マウスと比較した結果、野生型マウスと比較して有意に減少していた。以上の結果から、CCL25遺伝子は成獣マウスにおいて破骨細胞の分化抑制と成長板形成または肥厚化の促進により骨成長を促進している可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果から、CCL25は成獣マウスにおいて骨成長促進に関与している事が示唆された。これまで10日齢および10週齢マウスで検討していたが、さらに3週齢マウスを用いて同様に検討する予定である。さらに、骨芽細胞数および骨芽細胞・破骨細胞マーカー遺伝子の発現量およびマイクロCTによる骨形態計測を行い、骨密度や骨梁数などに変化があるか検討する。 また、遺伝子欠損マウスから骨芽細胞を採取してRaw264.7細胞と共存培養することで破骨細胞誘導能を野生型マウス由来の骨芽細胞と比較して、カップリングにCCL25が与える影響を検討する。 さらに、骨髄細胞のポピュレーションを遺伝子欠損および人工哺育それぞれの実験系で比較し、乳汁中CCL25と体内でのCCL25とが骨髄環境に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の予定通りの実験を行ったが、最低限の消耗品で実験を遂行しようと努力した結果、13,371円の節約に成功したため。平成30年度の交付金と併せ、研究に必要な消耗品を購入する計画である。
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