2016 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴う雌性繁殖・養育能力の減退改善に向けたアミノ酸栄養学の構築
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16K12724
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古瀬 充宏 九州大学, 農学研究院, 教授 (30209176)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 加齢 / ストレス / アミノ酸 / 女性 / 生殖器官 |
Outline of Annual Research Achievements |
老化やストレスは生活の質に影響するが、適切な栄養はこれらの効果を防ぐ手段の一つとなりうる。今日、高齢者が消費するタンパク質の量に焦点が当てられているが、個々のアミノ酸代謝の変化は十分に考慮されていない。さらに、平均寿命と健康寿命の差は、男性の場合よりも女性の方が大きい。今回の研究では、女性の健康寿命の延伸を目指すために、若年期と中年期の雌マウスを比較することにより、ストレスと加齢が代謝と情動行動に及ぼす影響を評価することとした。28日間毎日拘束ストレスを負荷した。その後に行動試験と組織のサンプリングを行った。結果として、中年期マウスの体重はストレスによって著しく低下した。新奇環境にマウスを置くオープンフィールド試験における全移動距離に加齢とストレスの効果は検出されなかった。また、高架式十字迷路を用いた不安用行動の評価と強制水泳試験を用いたうつ様行動の評価においても加齢とストレスの影響は現れなかった。高齢化は、脳におけるアミノ酸代謝と子宮および卵巣における様々なアミノ酸レベルに影響を与えた。なかでも子宮と卵巣に注目すると以下のような変化が認められた。中年期の子宮において、遊離L-Asp, L-Ser, L-Gln, L-His, L-Arg, L-Tyr, L-Val, L-Met, L-Phe, L-IleおよびL-Leuは若齢期のものよりも高かった。卵巣においても、遊離L-Asp, L-His, L-Arg, Tau, L-Met, L-Phe, L-Ileおよび L-Leuは中年期で高い値を示した。結論として、中年期マウスは体重減少の点でストレスを受けやすく、脳および生殖器官のアミノ酸代謝はストレスよりもむしろ老化の影響を強く受けることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度には、次に述べる実験計画を申請した。若齢および中年期の雌ICRマウスを通常環境とストレス負荷環境で1カ月飼育する。ストレスには拘束ストレスを用い、1日当たり30分間施す。1カ月後より、1)活動飛・情動性に及ぼす影響をオープンフィールド試験で、2)抗不安行動に及ぼす影態を高架式十時迷路試験で、3)うつ様行動に及ぼす影幣を強制水泳試験で調査する。それぞれの試験を1日おきに行い、強制水泳試験終了後に、脳、子宮・卵巣ならびに血液を採取する。脳からは、海馬、視床下部、小脳などを得て、アミノ酸ならびにモノアミンの分析に供する。子宮・卵巣に関してはアミノ酸分析を行う。血液から血漿を得た後に、アミノ酸の分析を行う。アミノ酸はL型とD型のアミノ酸を分離分析できるUPLCを用いて、モノアミンはHPLCを用いて分析を行う。UPLCとHPLCは現有し、常時稼働している。L型からD型アミノ酸への変動が認められたアミノ酸に関してはそれに関わる酵素であるラセマーゼの遺伝子発視を、L型アミノ酸ならびにその代謝産物に変動が認められた場合には、関連する酵素の迪伝子発現を調査し、アミノ酸代謝制御への加齢とストレスの関与を明確にする。1)各行動指標と脳の遊離アミノ酸浪度の関係、2)子宮・卵巣の遊離アミノ酸誤度と血漿遊離アミノ酸濃度の関係を明らかにし、ストレスや加齢により変動するアミノ酸を明らかにする。これらの実験の重要部分に関しては既に論文として公表した。また、母乳遊離アミノ酸濃度に対するストレス負荷や飼料アミノ酸の影署について検討を行うと共に母マウスの養育行動を調査するとも申請したが、研究は終了し現在論文を投稿中である。これらの成果を基に、当初の計画以上に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
筋力、記憶力、妊娠機能などは加齢に伴い低下することが認められている。更に、現代社会における高齢出産の機会の増加により、不妊率や妊娠・出産の際に母子共々にリスクが上昇することが問題視されている。これらを引き起こす要因の一つには、酸化ストレスが挙げられる。酸化ストレスによるミトコンドリアの損傷とその機能の低下が、卵子の質も下げると考えられている。また、3-ニトロプロピオン酸 (3-NPA) はミトコンドリアの神経毒であり、酸化ストレスを増加させ加齢を促進させることが知られている。しかし、生殖機能への影響に関してはまだ解明されていない点も多い。 一方、前年度の研究より生殖器官のアミノ酸代謝はストレスよりもむしろ老化の影響を強く受けることが判明した。そこで、本年度では、主に卵子の質という観点から、3-NPAの投与による雌マウスの生殖機能や身体機能の変化を探ることを目的とする。 C57BL/6Jマウスの若齢期 (7週齢)、中年期 (8ケ月齢) において活性酸素 (ROS)と卵子の質を免疫蛍光染色によって観察する。卵子の質は、紡錘体の乱れや染色体の配置の変化を確認する。また、3-NPAを若齢期と中年期のマウスに投与し、酸化ストレスにより卵子の質がどのように変化するかを確認する。次いで、若齢期マウスの急激な加齢モデルとして高濃度の3-NPAの投与の影響を調査する。生殖機能におけるアミノ酸代謝の変化をUPLCで分析し、身体機能への影響をローターロッド試験により調べる。また、抗酸化酵素のmRNA発現をqRT-PCRを用いて調べ、酸化ストレス増加の指標とする。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Aging rather than stress strongly influences amino acid metabolisms in the brain and genital organs of female mice2017
Author(s)
Kodaira, M., Nagasawa, M., Yamaguchi, T., Ikeda, H., Minaminaka, K., Chowdhury, V. S., Yasuo, S. and Furuse, M.
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Journal Title
Mechanisms of Ageing and Development
Volume: 162
Pages: 72-79
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Aging and additive oxidative stress influences female ovarian functions in mice2016
Author(s)
Kodaira, M., Ikeda, H., Yamaguchi, T., Yamauchi, N., Chowdhury, V.S., Yasuo, S., Furuse, M.
Organizer
17th AAAP ANIMAL SCIENCE CONGRESS
Place of Presentation
九州産業大学
Year and Date
2016-08-22 – 2016-08-25
Int'l Joint Research