2016 Fiscal Year Research-status Report
学校の栽培活動で児童・生徒が実践するための有機農法の科学的検証
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16K12763
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
平尾 健二 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (70301348)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 農業教育 / 有機農法 / 生物育成 / 中学校技術科 / 高等学校農業科 / アイガモ農法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,主に2つのテーマについて,専門家である著名な有機農業者の協力を仰ぎながら各研究を遂行した。 【研究1.「菌ちゃん元気野菜づくり」農家:吉田俊道氏の農法】 本農法の確立者である吉田俊道氏を研究協力者として,有機農法で栽培した野菜に「害虫が付かない」現象については,いくつかの実験を元に,考察を行った。その一つとして,慣行栽培および本農法の野菜に対する害虫の反応性,成長効率の関係から,本農法を行っている農場における害虫の発生数が減少する理由について,ある程度の推論を得ることができた。また,この農法が成立するメカニズムに関しても,土壌微生物に注目しながら,野菜の成長効率,体内の栄養成分の関係から検証した結果,土壌の化学性,物理性に理由が存在することが示唆されるデータを得ることができた。 【研究2.「水稲品種ハッピーヒルによる無肥料栽培」農家:故福岡正信氏の農法】 低投入型農法に適した超多収品種であるハッピーヒルの潜在能力に関して,今年度は低投入型の有機農法として有名なアイガモ農法(有機農業者:古野隆雄氏確立)下での比較実験を行った。すなわち,カモとの共存下での本品種の特性を明らかにしようとするものであり,品種の特性(穂数少,籾数多)と本農法とのマッチングについては,品種の弱点として挙げられる登熟歩合が低い性質も,未登熟米をカモのエサとしての利用を想定することにより,アドバンテージとすることが可能であることが明らかとなった。古野氏からは,学校教材化を念頭にしたときには,この発想がより本農法の魅力となるとの評価をいただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つのテーマを同時進行させながら,両テーマとも著名な有機農業者から今年度の成果について高い評価をいただいていること,ならびに,それぞれ教育現場での応用を視野に入れながら,基礎的な科学的検証を進めることができていることの理由から,現在までの進捗状況について,「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,それぞれのテーマについて,有機農業者の助言をいただきながら進めているが,さらに専門的なアプローチが必要と考え,研究1(「菌ちゃん元気野菜づくり」農家:吉田俊道氏の農法)では,微生物工学,園芸生理学,作物生態学等の4名の専門家,研究2(研究2.「水稲品種ハッピーヒルによる無肥料栽培」農家:故福岡正信氏の農法)では,稲の育種学(遺伝学)の専門家1名を連携研究者として位置づけ,研究協力体制を築くことができた。この研究体制を発展させながら,今度はより深い科学的検証を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初,物品の購入や謝金・アルバイトに多くの金額を計上していたが,実際には,これを下回った予算で,実験を効率的に遂行することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては,専門的な知識の提供等,謝金・アルバイト料が発生する予定であるので,有効に活用し,効率的に研究を進めたい。
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