2016 Fiscal Year Research-status Report
身近な昆虫を利用した行動観察法の確立:ボウフラの捕食回避行動に着目して
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16K12766
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
大庭 伸也 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20638481)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 捕食者と被食者の関係 / 理科教材 / ボウフラ / メダカ / 捕食回避行動 / トラップ / 高校生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物界に広く見られる、食うもの(捕食者)と食われるもの(被食者)の関係を生徒や学生に進化の視点で理解させるため、蚊の幼虫(ボウフラ)とその捕食者を用いた実験・観察系を確立することが本研究の目的である。平成28年度は以下のサブテーマに取り組んだ。 ①教材候補種の採集方法の確立:長崎と、長崎とは蚊相が異なる琉球列島で様々なサイズのトラップを設置し、採集されるボウフラを調べたところ、いずれの地域でもLLサイズのトラップではアカイエカ種群、Sサイズではヒトスジシマカが採集できることが分かった。 ②行動観察:トラップで採集され得るアカイエカ種群3種のアカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカに加え、ヒトスジシマカの行動観察を対照区と、身近な天敵であるメダカがいた水(メダカ水)で比較したところ、アカイエカ種群は有意にメダカ水中で行動が抑制される一方で、ヒトスジシマカでは行動の変化が観察されなかった。また、西表島で採集される蚊でも同様の行動観察を行い、行動変化が確認される種を選定した。 ③生活史形質への影響:捕食者の存在がボウフラの行動を変化させ、結果的にボウフラの成長にも影響することが考えられるため、実験室条件下で捕食者・メダカの有無が蚊の生活史形質に与える影響を検討した。その結果、アカイエカ種群3種では羽化率、発育日数、成虫サイズに処理区間で有意な違いが検出されたが、ヒトスジシマカでは処理区間で違いがなかった。しかし、今年度の実験ではアカイエカ種群の羽化率が低かったため、飼育条件の再考を含めて次年度に追試を行いたい。 ④野外の天敵:野外に設置したトラップでボウフラとともに採集される天敵を調べたところ、長崎及び沖縄ではカクイカの仲間が共に存在していた。また、長崎ではカタビロアメンボ類も確認され、これらの捕食から逃れられるような行動変化が、ボウフラに現れるのかもしれない。これは次年度の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予算の関係で学外での調査が少なくなったものの、予定していたテーマの8割は実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で掲げた『生活史形質への影響』の追試と『野外の天敵』が存在する際のボウフラの行動変化を調べたい。また、教材化に向けたマニュアル作りに着手するため、中学校の理科の授業内で、観察を実施する予定である。
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Research Products
(4 results)