2017 Fiscal Year Research-status Report
火山性フッ素の摂取濃度を用いた人間活動の復元手法の開発
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16K12811
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Research Institution | Date City Institute of Funnkawann Culture |
Principal Investigator |
青野 友哉 伊達市噴火湾文化研究所, その他部局等, 学芸員 (60620896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (10374943)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯 / 火山性フッ素 / 縄文時代 / 社会復元 / 岩屑なだれ堆積物 / 湧水 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、北海道有珠山周辺の湧水と井戸水のフッ素濃度の測定を継続した。特に、海岸付近の湧水のフッ素濃度が高い点について、海水の混入が考えられたため、ナトリウムの濃度と合わせて再測定した。その結果、海岸付近では、フッ素濃度が高い海水が湧水に混入していると判断されたが、同時にナトリウム濃度をもとに海水の混入の比率を割り出し、本来の湧水のフッ素濃度に補正することができた。その結果、有珠山の半径約5㎞の範囲内の自然湧水のフッ素濃度は0.16~0.78mg/Lと高濃度であり、それ以外の地域(0.05未満~0.10 mg/L)と比べると平均で約5倍も高いことが再確認された。 また、縄文・続縄文期の遺跡周辺で採取できる自然湧水や河川水のフッ素濃度の差が際立っているのは、有珠山岩屑なだれ堆積物の分布範囲の内にある有珠モシリ遺跡と、分布範囲外にある北黄金貝塚であることから、古人骨の歯のフッ素量で在地者と移入者を区別する方法の検証は、両遺跡の古人骨を用いるのが良いと判断した。これらの結果は今後の古人骨を用いた分析の大前提となるため、日本人類学会大会において発表した。 また、古病理分析においては、縄文晩期から続縄文期にかけての有珠モシリ遺跡出土の古人骨を対象に、歯牙フッ素症及び齲歯の観察を行った。 さらに、歯のエナメル質中のフッ素濃度を深度とともに記録する方法を確立するため、九州大学の吉村和久氏の協力のもと、現代人の歯を用いて測定を行った。また、同様の方法で古人骨の分析を行うため、有珠モシリ遺跡(縄文晩期~続縄文期)と北黄金貝塚(縄文前期)出土人骨の歯を採取し、レプリカの作成に着手した。また、比較のために有珠モシリ遺跡出土のエゾシカとオットセイの歯を採取した。分析は次年度に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、①海岸付近の湧水における高フッ素濃度の原因究明、②歯牙フッ素症の人骨のデータ収集、③歯のエナメル質のフッ素量測定といった当初の目的通りの分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、火山の地下水脈の違いによるフッ素濃度の違いについて検討する。また、古病理と火山性フッ素との関連性は対象人骨を増やしてデータを集積する。さらに、有珠モシリ遺跡及び北黄金貝塚の出土人骨の歯を用いて、フッ素濃度の違いをもとに移入者の特定について検討する。 具体的には、有珠モシリ遺跡及び北黄金貝塚出土の歯(10点)のフッ素濃度を測定して比較を行う。さらに、有珠モシリ遺跡出土の陸獣(エゾシカ)と海棲哺乳類(オットセイ)の歯の分析を行って人の歯と比較することで、埋没中のフッ素の吸収について傾向を把握する。同時に、歯のSr同位体比と炭酸塩の酸素・炭素同位体比を測定し、これらからも移入者の特定を可能にする手法の開発について検討する。
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Causes of Carryover |
予定していた物品費が十分に足りていたため残額が生じた。
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Research Products
(8 results)