2016 Fiscal Year Research-status Report
ルビジウム‐ストロンチウム放射壊変系による出土琥珀の産地推定
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16K12812
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Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
植田 直見 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10193806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若木 重行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 技術研究員 (50548188)
谷水 雅治 関西学院大学, 理工学部, 教授 (20373459)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 出土琥珀 / ストロンチウム / ルビジウム / 同位体比分析 / 産地推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
琥珀からルビジウム(Rb)とストロンチウム(Sr)を取り出しその濃度測定を実行するためには琥珀中に含まれる多量の有機物を取り除く前処理の操作が必要となる。これまでは無機酸を用い有機物を分解する方法でRbとSrを取り出す方法が主流であった。しかし、有機物の含有率が極めて高い琥珀ではこの方法によると非常に作業が煩雑で操作性に劣る過程を経ることが分かった。そこでより操作性と精度の高い方法を検討することから実験を始めた。まず、予備実験として多くの試料を有する標準琥珀を、プラズマ灰化装置を用い、温度や時間などの条件を検討した。これまでこのような目的でこの灰化装置は用いられていなかったため初めての試みとなった。前処理としてプラズマ灰化装置を用い、適切な条件で実験を実施した結果、精度よく有機物をほとんど確認できないまでに灰化させ減少させることができ、これに続く無機分析が実施できる条件を整えることが可能となった。次に灰化物から高機能イオン交換樹脂により分離したRbとSrについて、質量分析装置を用いてそれぞれの濃度と同位体比分析を行った。標準資料を分析した結果をもとに、87Rb/86Srと87Sr/86Srの相関図を作成した。その結果、今後より多くの資料を分析しそれらを図にプロットすることが必要であるが、出土琥珀の産地推定に繋げることができる可能性が期待できる結果となった。 併せて、琥珀中に含まれる土壌成分の組成を調べるため、スプリングエイトによる放射光蛍光X線分析を実施し、含まれる微量元素の検出を試みた。その結果、それぞれの同一個体においては土壌成分に由来する元素の大きな偏在化は確認できず、また微量元素の存在には個体差があることが分かった。しかし、産地毎の特徴が得られるまでの結果とはならなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
琥珀の主成分である有機物を除くための方法と条件の検討に時間がかかった。実験を始める前に計画していた方法では非常に操作性が悪いことが判明したため、新たに効率の良い方法を検討した。そのため、次段階の灰化後のRbとSrの分離に進む時期が遅れ、それに伴って質量分析の時期も遅れた。最終的には年度内にはごく一部の標準琥珀の分析を完了するにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
出土琥珀の灰化条件の決定により、主成分の有機物を効率よく取り除く方法を確立した。29年度はこの方法を用いてできるだけ多くの標準琥珀および出土琥珀の灰化を行い、Sr、Rbを単離し質量分析によりそれぞれの濃度を測定する。特に標準琥珀についてはできるだけ多くのデータを収集することにより産地推定に向けてその特徴が反映されるかどうかを見極める。
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Causes of Carryover |
当初は初年度に琥珀からSr、Rbをイオン交換樹脂により単離し、さらに質量分析装置による分析まで実施する予定で実験を進めた。しかし、有機物の占める割合の高い琥珀から無機酸を使用して有機物を除去する方法では次段階のSr、Rbの単離の操作性が悪く精度を上げるためにも有機物の除去方法を再検討する必要があった。レーザ灰化装置を用いた有機物の除去方法は無機酸を使用する方法に比べより作業性がよく精度の高い方法であることがわかったが、条件決定のために時間がかかった。そのため、当初予定していたSr、Rbの単離がごく一部の琥珀についてしか実施できなかったため、それに必要なイオン交換樹脂の消耗も少なくカラムを交換する必要がなく、それにかかる費用(物品費)が発生しなかった。また、一連の実験・分析の補助(人件費)を予定していたがその必要が無くなり、費用が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は28年度にほとんど実施できなかったSrとRbの単離をイオン交換樹脂を用いて実施し、続く質量分析も昨年度実施できなかった分も含め実行する。そのため、繰越の費用は当初の項目通りに年度内に充填し、さらに予定していた分析も年度内に実施する計画で進めるため、29年度は昨年度の繰越も併せて支出する予定である。
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