2016 Fiscal Year Research-status Report
自治体・NPOと協働する都市困窮地域の再成と居住福祉ビジネスの社会化
Project/Area Number |
16K12821
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
水内 俊雄 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 教授 (60181880)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 居住福祉 / 生活保護 / 社会ビジネス / 不動産業 / インナーシティ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究フィールドは2つに分かれて進められた。ひとつは生活困窮者の居住福祉の支援におけるNPOや、関連する生活困窮者自立支援事業のもとに進められる一時生活支援事業への関りに関する調査である。この調査は全国自治体アンケート調査とNPO調査において、重点的に、札幌、東京、大阪、阪神間都市、岡山において進められた。その分析結果は、日本の地域福祉30号において、「地域福祉を下支えする「一時生活支援事業」の新たな可能性」として明らかにした。 また厚労省が主宰する二つの委員会、「生活保護受給者の宿泊施設及び生活支援の在り方に関する意見交換会」「ホームレスの実態に関する全国調査に係る意見交換会」などのメンバーとして、厚労省が今後居住福祉施策の在り方を構想するバックアップデータを、上述の実績などを踏まえて数値をもとに提供することができたことは、政策支援研究として意義あるものとなった。またNPOの当該分野における社会ビジネス化において、生活困窮者自立支援の現場で関わる人々の研修・交流の場として、「住居確保や維持が困難な人々への支援のあり方を考える―一時生活支援事業の今後と継続的な居住支援」」を企画し、ネットワークの構築と、先進事例の共有や、その政策的位置づけを議論できるプラットフォームを作りあげたことも、大きな今後の資産となった。 二つ目は、大阪市西成区及び浪速区における近年激増してきた民泊、ゲストハウスの実態調査が、さらに深く進んだことにある。生活困窮者が居住するいわゆる「福祉アパート」経営を、包容力ある都市の居住福祉の力を借りた再成と位置付けてきた。ところがこの民泊の需要はこうした福祉アパートそのものの用途転換を引き起こすとともに、福祉物件としても動きにくかった遊休資源も活用しはじめた。現時点ではこの動きをフォローしており、問題の所在や可能性を、さまざまな広報活動を通じて行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたことより進展したことは、厚労省の上述の委員会のメンバーとして、この研究のアウトカムが政策形成のバックアップ資料となる、そうした研究応用の回路が登場したことにある。またこうした委員会にNPOも出席し、福祉業界における社会ビジネスとなる認識の環境づくりに資したといえる。 具体的には、生活困窮者の居住福祉を支える空間的資源としての中間ハウジングを介した支援の実態と、そこには7つの類型が存在し、それぞれの生活支援のトラックの存在することを明らかにしたことは、初見のファクトファインディングスであると自負している。またこの生活支援にはかなり大きな地域差のあることも明らかにできたことも強調しておきたい。支援の中身やその効果および、財政的なお金の動きの解明については、今後の課題としたい。 またNPOとのネットワークの強化という意味で、生活困窮者自立支援での先進的な居住福祉の取り組みへに関する蓄積されてきた調査結果を、ニーズとそれに対するサプライ、そしてそれをコントロールするそれぞれの自治体のガバナンスの地域差が大きいだけに、あるべきモデル像について、複数のトラックの存在のもとに提示する土台をつくったと考えている。 もうひとつのテーマとなった福祉アパートと民泊の同一都市空間内での競合状況について、動きが激しいだけに、不動産業界への密着調査により、実態の一部が解明されたといえる。民泊運営会社や中国人不動産業との関係が作りえたことは、今後の展開に大きく資するものと期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2つのテーマにそって計画を進めてゆくが、生活困窮者自立支援で特に中間ハウジングを介してのあるべきシステムづくりへの提案という観点で、昨年度までの調査で明らかとなった一時生活支援事業の複数のトラックにそって、まず理想型の追究を行いたい、大都市では旧来のセンター型に加え、NPOが担うホームレス支援の専用トラックを有した支援類型において、ニーズをどれだけキャッチしサプライに結び付けているのか、そのバランスを明らかにする。これに加え中規模都市以上のところで先進的に取り組まれているNPO主導のシステムのニーズとサプライのバランスについて数値的に実証することを目的としたい。政策支援的には、サービスゼロの自治体域もあり、サービス開始のための条件、環境づくりについても、啓蒙的な広報活動も関連NPOと連携して行う。 もう一つの福祉アパートと民泊の需要の競合する住宅市場での動きのキャッチアップと、あるべき都市再成の在り方の追究については、引き続き大阪市の西成区、浪速区で実態調査を行う。個々の転用事例の従前従後の変化を追いつつ、福祉アパートへの圧迫が生じるのか、それとも遊休資源の掘り起こしにつながっているのか、居住と宿泊のミックスがどれほど可能であるのか、ホスト、大屋、運営会社、バックアップ会社、不動産業のそれぞれの関わりを調査より明らかにしつつ、まずは地域で起こっていることの正確な情報を提示してゆきたい。
|
Causes of Carryover |
西成区、浪速区での現地調査などで年度をまたぐことになり、未執行額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
西成区、浪速区での現地調査を引き続き進めてゆく。
|
Research Products
(14 results)