2018 Fiscal Year Research-status Report
医療安全システムの比較分析:インシデントデータのライフサイクルの視点から
Project/Area Number |
16K12822
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小舘 尚文 北海道大学, 公共政策学連携研究部, センター研究員 (50396694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
種田 憲一郎 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (10399454)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 医療安全 / 公共政策 / 安全学 / 社会システム論 / 医療政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、国内の協力機関である2つの病院(急性期・精神科)におけるヒヤリングおよび観察調査で収集したデータ分析に力を注いだ。本研究の目的は、(1)病院における医療安全体制・リスクマネジメントについて知る、(2)病院におけるインシデントおよびヒヤリ・ハット報告システムのデータ活用のされ方について調べる、(3)「学び」のプロセスを改善する方法を探るという3点であった。聞き取り調査データ(61件)の分析に際して、研究チームの会議を数回開催し、特に(2)に着目しながら、インシデントデータのライフサイクルという視点を基礎とした分析枠組み・テーマを絞り出した。聞き取り調査の対象者に関するプロファイル(職種と経験年数、医療安全員会の委員か否か等)、インシデントデータからの学びがどの程度と感じているか、そして、インシデントによって得られた知見、それらを活かした対策の効果、最近の具体事例などを抽出して、観察データ(46件分)も参照しながらの分析を継続している。 一方、海外におけるヒヤリング調査は、2018年4月~5月にかけて、フランス(パリ、リヨン、マルセイユ)で計3件のインタビューを実施した。海外における調査は、アイルランド(3件)、オランダ(2件)、ドイツ(2件)、デンマーク(3件)、スコットランド(1件)とフランス(3件)で、合計14件で終了とした。海外調査をもとにした論稿は、実務者や患者団体向け雑誌『医療安全レポート』(15号、19号、23号)に寄稿し、掲載された。学会発表としては、ダブリンで行われたアイルランド保健省主催第3回 NPSO Conference(2018年11月)、グラスゴーで行われた国際フォーラム(International Forum on Quality and Safety in Healthcare 2019)にてポスター発表を行った(2019年3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度から続く遅れは取り戻せていないが、データ解析には時間をかける必要もあると考えている。また、平成30年度は、データの分析とともに、アイルランドおよびイギリスにおける国際学会での発信にも時間を割いた。分析を進める中で、プロジェクトへのフィードバックを得るとともに、世界における研究の進展を追いかける必要性も感じている。発信に時間をかけたことは分析を進める上でも役立った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に、海外調査で、フランスにおける3か所のヒヤリングを行うことができたのは、収穫であった。海外で収集されたデータは、これまでも『医療安全レポート』を通じて、定期的に国内発信・還元を行ってきたが、今後も継続していくことになっている。また、延長が認められたことによって、次年度は、これらをまとめて学術論文にすることも検討する。さらに、国内調査データのまとめを行い、協力機関へのフィードバックを行うとともに、学術論文および学会における発信も続けていく。その中で、次年度は、インシデントデータからの学びの改善について、次の展開につなげられるよう専門家との連携も行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度3月で事業終了となる予定であったが、研究発表やデータ分析に、予想以上の時間を要することが明らかになったことで、延長希望を提出した。平成31年度(令和1年度)には、分析のまとめおよび次なるステップの準備期間として、結果の発信を行っていくために研究費を使用する予定である。
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