2016 Fiscal Year Research-status Report
強震観測記録と地盤情報を融合した広域かつ即時的な地震動増幅特性の予測法
Project/Area Number |
16K12848
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
飛田 哲男 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (00346058)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地震 / 地震応答解析 / 地盤情報データベース / リアルタイム地震動活用 / 強震観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,常時の地盤震動の監視から地震後短時間に特定地点の地震動と被災程度を予測できる次世代型地震防災システムを構築し,地震防災上重要な指標のひとつであり,局所的な地盤構造の影響を強く受けるとされる地表付近の地震動増幅特性について,高精度かつ即時的な予測を目指す.この目的を達成するため,(1)K-NETをはじめとする高密度地震観測網から得られる地震観測記録及び(2)近年整備されつつある地盤情報データベースと(3)地震応答解析法の3者を同時かつ即時的に用いる. 初年度である平成28年度には,既往の地盤情報データと本研究申請者らが開発した1次元地震応答解析法を組み合わせ,既往の揺れやすさマップと比較検討し,当該地点の地震動増幅特性の特徴がとらえられていることを確認した.またパソコンとUSB接続可能な加速度計を用い,モデル地盤の地震応答を即時的に計算して求める為のプラットフォームを構築した.現時点において,ほぼ研究実施計画通りに遂行できているものの,より精度を高めるため,地盤情報データの深度情報が不足している場合の扱いや,数値計算の即時性を向上させるため並列化,多点同時計算等の工夫が必要であることなどが課題として浮かび上がってきた.この課題を克服するため,地盤情報データの合理的な外挿方法を工夫したり,数値計算の入出力に要する時間を含む計算時間の高速化のため並列化コードを採用する予定である.さらに,大型計算機への実装についても検討を進め,実装へ向けての予算獲得と組織作りを行いたいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,下記2点に目的を絞り研究を行った.(1) 地盤情報データと1次元地震応答解析法を組み合わせ,既往の揺れやすさマップと比較検討し,当該地点の地震動増幅特性の特徴がとらえられていることを確認する.(2) 強震観測データを用いて即時的に地震応答解析を行うシステムを開発する. 上記の目標に対し,進捗状況は以下のとおりである. 1)マイクロソフトエクセルのマクロを活用し,即時的な1次元地震応答解析が可能となった.しかし,現在のところソフトウェアの制約から,1台のパソコンで1地点のみ解析可能である.また,精度や計算の限界が指摘されたので,今後改善,検証していく必要がある. 2)2011年東北地方太平洋沖地震と2016年熊本地震で観測された強震記録を用い,大阪平野における地盤情報データベースから得られる地盤情報を基に1次元地震応答解析を実施した.その結果,今回用いた解析法による地盤増幅率と既往の研究の結果にやや差があることを確認した.既往の研究では微地形を考慮した経験式を元に地盤増幅率を求めているのに対し,今回行った数値解析では地盤情報データベースを活用している.すなわち,ベースとなるデータが異なることが差が生じた主要因である.また,地盤情報データベースは既往のボーリングデータを参照して代表値が決められているので,場所によって数値解析に必要な深度方向のデータが不足するという問題がある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に達成した課題である(1)加速度計の記録を入力し即時解析を行う手法と(2)地盤情報データベースと地震応答解析による地盤増幅率を面的に求める方法の両者を組み合わせることが平成29年度の課題である.そこで,データの入出力を含む計算速度の向上を図ること,ならびに,多点同時解析を実現することを目指して研究開発を進める.そのうえで,解析精度の向上に関する手法の検討と開発を行う.具体的には,強震観測地点において公開されている既往の地盤情報を応答計算の初期入力パラメータとして用い,それを修正することで観測値と計算値の誤差を最小化する.この一連の作業について自動化するシステムを構築する.さらに,解析時間の短縮化について検討し,大型計算機への実装についても検討を進める.その後,実装へ向けての予算獲得と組織作りを行いたいと考えている.
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