2017 Fiscal Year Research-status Report
透水係数の非定常変動という新概念に基づく河川堤防の安全性モニタリング技術の開発
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16K12852
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
松本 健作 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (90302455)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 伏流水 / 河川堤防 / 現地観測 / 数値シミュレーション / モニタリング / 基盤漏水 / 出水時応答 / 透水係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
堤防近傍の地下水観測孔を使用して透水係数の変動状況を推定するための数値シミュレーションを実施した.精度検証のための簡易な2次元室内実験を実施し,数値シミュレーションに用いるパラメータ値を決定した.土質条件は,取り組みの端緒として均質な豊浦標準砂を想定し,完全飽和状態とした.まず初めに,流入流量の変動に対する孔内水位の感度検証を実施したところ,孔に近い位置に発生する流量変動ほど孔内水位の応答が強いことが確認できた.ここから,孔内水位の応答性から,定量の変動が発生している位置を推定する近似式を提案することができた. また,検討のなかで,観測孔の水位と周辺地盤内の地下水位に関する既往の提案式の適用性考察も実施したが,既往式のほとんどが,地下水が静水状態であることが前提となっており,河川近傍の伏流水を対象とした本研究のように,観測孔周辺に顕著な流動が確認できる場合には適用が難しいことが明らかとなった.そこで,地下水流動が存在する条件下における既往式の修正を試みた.提案式の検証には現地実証実験等,今後のデータの蓄積による検証が必要であり,それについては今後の課題とした. 観測孔内水位が周辺地盤内の流量変化に対して有意な応答性を有していることが確認できたため,次に,流量変動を引き起こす要因として出水時を想定した直近河川の水位変動に対する応答を検討した.河川水位の非定常変動に対して示す孔内水位には数値シミュレーション上では有意な感度を示す結果が得られたが,実際の現地適用には,土質の不均質性の影響,3次元的な動水勾配の複雑な挙動,飽和・不飽和浸透流の考慮など,多くの課題があることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた観測孔内水位のモニタリングから,周辺地盤内の局所的流量変動を推定する試みは限定的な条件下においてという制約はあるものの,良好な結果を得ることができた.このため,仮に有意な感度が得られなかった場合に取り組む予定であった超高感度ピックアップの開発を実施する必要が生じなかったため,数値シミュレーションによる感度検証を予定以上に推進することができた. 一方で,数値シミュレーション結果を現地観測結果と比較検討する取り組みについては,観測対象として選定したサイト周辺における伏流水の流速が一般に想定される流速を大きく上回っており,現地観測結果との比較検討については一旦保留とした.
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Strategy for Future Research Activity |
当初案で計画していた現地観測結果との比較検討については,別サイトを選定する,あるいは既存の観測結果を用いるなどの方法を検討している.更に別案としては,現在考慮していない移流項を方程式に取り込み,移流場を想定した数値シミュレーションとして現在の観測サイトにおける検討を実施する方法も検討中である. また前年度までに,流量の局所的変動を対象として観測孔内水位の応答性を検証しているところであるが,この局所的流量変動を引き起こす一因としての透水係数の非定常変動を解析条件に取り入れ,これによって,本研究の主題である,透水係数の非定常変動特性に関する検討を,観測孔内水位や,場合によっては孔内流況も考慮したうえで検討する.
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