2016 Fiscal Year Research-status Report
Carbon fiber sheet for snow melting prepared by carbonization of Japanese paper
Project/Area Number |
16K12853
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
岡元 智一郎 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (60313566)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 融雪 / 炭素繊維シート / 赤外発光 / 電気伝導 / 和紙 / 絹布 / 炭酸塩 / 複合化 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素繊維は、軽量であり、機械強度が高く、電気伝導性にも優れることから、従来の構造強化材料としての用途以外にも、機能材料としての重要性が高まっている。特に、赤外線の放射率は、ほぼ1であり、雪を溶かすには、理想的な発熱材料となり得る。本研究では、従来、アクリル繊維またはピッチを原料として得られる炭素繊維を、天然の繊維を原料として合成する手法について検討を行っている。また、赤外発光材料との複合化による、高性能の融雪用炭素繊維シートの開発を目指している。 従来の炭素繊維の合成における問題の一つは、無酸素雰囲気中で1000℃以上の高温プロセスが必要となることである。これに対して、本研究者は、市販の和紙をカーボン炉で炭化させることにより、従来よりも大幅に低温のプロセスにおいてもニクロム線に迫る低抵抗率の炭素繊維シートの合成に成功している。しかし、手で触ると崩れる程脆く、機械強度の向上が課題となっていた。 そこで、H28年度は、炭素繊維シートの新たな合成法の検討を行った。原料となる天然繊維として和紙及び絹布を選択し、それらを炭素および炭酸塩の混合粉末を入れた容器中に埋め込み、空気中400~800 ℃、30分の熱処理を行った。その後、生成物を洗浄し、余分な炭酸塩と炭素を除去した。その結果、和紙を用いた場合は、洗浄工程において繊維が崩れるために、良質な炭素繊維シートを得ることはできなかった。これに対して絹布を用いた場合は、元の織目構造を維持した丈夫な炭素繊維シートを得ることができた。また、良好な電気伝導性を示すことを確認した。以上のことから、炭素繊維シートを得るための天然原料として、絹の有用性が示唆された。その他に、高い赤外線発生能を付与した高性能の融雪用炭素繊維シートの合成に向け、各種の発光材料の合成および評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度は、炭素繊維シートの新たな合成法の検討を行い、当初、目的とした性能を有する炭素繊維シートの合成に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果として、良質な炭素繊維シートの合成における天然原料として、絹布の有効性が示唆された。また、良好な赤外発光材料として、BaSnO3の合成法について知見を得た。今後、炭素繊維シートと発光材料の複合化による、高い赤外線発生能を付与した高性能の融雪用炭素繊維シートの合成に向けた検討を行う。
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Causes of Carryover |
予算減額により、当初使用予定であったカーボン炉用発熱体の購入が困難となり、H28年度は、天然繊維を用いた炭素繊維シートの新たな低コスト合成法の検討を行ったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
得られる炭素繊維の電気的・機械的・光学的評価を行う。また、炭素繊維と赤外発光材料との複合材料を作製する。電気的・機械的・光学的評価と同時に、複合材料中の赤外発光材料の分散状態、発光材料/炭素繊維界面の接合状態を評価する。更に、冬の長岡市で豊富に得られる雪を使って、融雪用に用いる面状赤外線放射材料としてのフィールド試験を行う。これらの検討を行うために予算を有効に使用する。
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Research Products
(7 results)