2016 Fiscal Year Research-status Report
洪水河川の迅速な流況観測を実現する無人潜水艇ロボットの開発
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16K12854
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山上 路生 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80362458)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 流速の自動計測 / 流量観測技術 / 自律制御ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,安全かつ迅速に洪水河川流速を計測する潜水艇ロボットの開発で,リアルタイム洪水流量データのスピーディな取得・伝達の点から洪水対策に貢献するものである.現状の浮子による洪水流速計測は精度や機動性に問題があり,また流速計を使用する際も橋梁や流れ中に固定台を設置する大掛かりで危険な作業が要求される.申請者はかつて実河川の乱流計測を実施した際,その手間や危険性を実感し思案を重ね,流れに対して静止する無人ボートの推進スクリュー回転数より主流速を計測する新しいアイデアを思いついた.実際にマイコン基盤を用いたボート型の試作機を開発して水路試験と野外河川におけるテストを実施した. 実河川の流況把握は,水工構造物の管理やゲート操作,さらに洪水氾濫時の迅速な避難誘導において重要な役割を担う.一方,モニタリングカメラは限られた地点にしか設定されておらず,しかも定量計測は困難であるため,その対策は急務である.また河川の流速観測は浮子流下の目視法が主流であるが、台風襲来時の暴風河川では危険であるとともに困難である.様々な最新手法が提案されているが,いずれも設置場所の制約や時間と労力を要する校正作業が必要といった課題があり,計測の簡便性や機動性で不利である. 本研究はこれまでの観測方法を根本的に見直したもので,特に初年度では下記の成果をあげた.ポジショニングシステムにイメージセンシングを取り入れた.とくにUSBカメラをノートPCに接続するだけのシンプルなもので,ユーザーはPCの画面上でリアルタイム画像の目標点をタッチすればロボットは自動でそこまで移動して,静止・計測モードに入る.前半では室内水路を中心に最適な制御特性を実現できるパラメータ群の決定,後半では野外小河川における実地テストを行い,小流速の条件ではあるが基本的なシステム運用を確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワンボードマイコンArduinoを組み込んだ自律制御型ボートロボットを自作した.スクリューモータをモーターアンプで正確にコントロールし,目的値まで自走して,静止することで推進力より対向流速を評価するシステムのアイデアを実証した.特に室内水路におけるテストを繰り返し行い,校正試験よりスクリュー回転数と対抗流速に一定の相関関係を得ることができた.サイドモーターをとりつけて横断方向にも移動可能とした.広幅水路における2次元移動実験も行い,スタート地点から任意の目標ポイントまで自走できることを確認した.またこの特性を利用して横断方向の流速分布の自動計測も実現できた. さらに野外の小河川にてテストを行い,屋外条件でも複数の課題はあるものの基本的な動作と河川流速の自動計測に成功した. これらの成果の一部を計測自動学会論文集および国際会議プロシーディングにて発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
本的な静止制御は確立できたので,H29年度では3Dプリンターによる船体の高速化,広範囲の移動制御法の開発を中心に研究を実施する.3DプリンターとCADソフトにより,安定性と高速性を実現する船体形状を実現する.また系統的に水理条件を変化させた水理実験を室内水路において行い,船体にかかる抗力係数を計測し,最適形状を決定する.さらに高出力モーターあるいはツインモーター方式の採用により推進力を増加させて高速化につなげる.さらに半潜水構造として風波の影響を極力抑える. カメラを用いたイメージングセンサによるポジショニングシステムではある程度正確なボートロボットのコントロールが可能となった.一方で天候や日射条件の変化によって船体のカラートラッキングが影響を受けることが野外テストより明らかになった.そこでこれらの影響を可能なかぎり排除するために,形状認識法やレンズフィルタによるバンドパス法なども研究し,野外条件でのトラッキング精度の信頼性・実用性を向上させる. また広範囲の移動を可能にするために、RTK-GPSモジュールの組み込みについても検討する.これが実現できれば,20m幅クラスの中規模河川での適用が期待できる.
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Causes of Carryover |
H29年度で購入検討の計測用備品の、後継機種がH30年度に開発・販売されるとの情報を得たため、H29年度の購入を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計測用備品(イメージセンシング用高速度カメラ)の購入を予定している。
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Research Products
(8 results)