2017 Fiscal Year Research-status Report
気象災害の低減に向けたウィンドプロファイラの高分解能データ処理手法の開発
Project/Area Number |
16K12861
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
山本 真之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所リモートセンシング研究室, 主任研究員 (90346073)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大気現象 / ウィンドプロファイラ / 高分解能観測 / 自然現象観測・予測 / リモートセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
ウィンドプロファイラ(WPR)は、晴天域における風速3成分(鉛直流・東西風・南北風)の高度プロファイルを主な計測対象とするレーダである。大気乱流は、WPRが受信する電波散乱エコー(大気エコー)の主要な発生源である。従来のWPRよりも観測分解能を向上させることで大気乱流の詳細を計測することを目的とした、次世代WPRの開発が進んでいる。WPRでは、不要エコー(クラッタ)が受信信号に混入することで、測定データの品質が悪化する問題点がある。クラッタによる測定データの品質悪化を極力防ぐことが、次世代WPRに求められる優れた観測分解能を実現するために必要である。 昨年度に引き続き、クラッタによる測定データの品質悪化を防ぐことを目的とした高分解能データ処理手法の開発に取り組んだ。クラッタによる測定データの品質悪化を防ぐ手段として、アダプティブクラッタ抑圧(ACS)、スペクトルパラメータ推定処理、及び高レンジ分解能測定を検討した。ACSは、複数のアンテナ(サブアレイ)と適応信号処理を用いて受信におけるアンテナのサイドローブパターンを制御することにより、クラッタを動的に抑圧する。スペクトルパラメータ推定処理では、大気エコーが卓越して存在するドップラー速度の範囲におけるドップラースペクトルのみを用いたスペクトルパラメータの推定を行うことで、クラッタの混入による悪影響を低減する。レンジイメージングとオーバーサンプリングを用いた高レンジ分解能測定は、クラッタによる悪影響が及ぶ高度範囲を小さくする効果がある。高分解能データ処理手法の性能評価に取り組んだ結果、クラッタが短時間に大きく変動するときに、クラッタによる測定データの品質悪化が十分に低減できない場合があることがわかった。問題を解決するための方法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クラッタによる測定データの品質悪化を防ぐ手段として、ACS、スペクトルパラメータ推定処理、及び高レンジ分解能測定を検討した。高分解能データ処理手法の性能評価に取り組んだ結果、クラッタが短時間に大きく変動するときに、クラッタによる測定データの品質悪化が十分に低減できない場合があることがわかった。問題を解決するための方法を検討したが、解決には至っていない。しかし、今年度に実施した検討により、次年度における高分解能データ処理手法の開発につながる着想を得ることができたと考えている。次年度に研究課題を継続することで、高分解能データ処理手法の性能向上を実現したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかになった問題の解決に、引き続き取り組む。東京都小金井市にある情報通信研究機構本部に設置されたWPRと、兵庫県神戸市にある阪神高速蓮宮換気所に設置されたWPRを用いた観測を実施する。WPRによる観測事例を用いることで、クラッタにおける変動要因の詳細を明らかにする。さらに、クラッタの変動要因に関する新たな知見に基づく高分解能データ処理手法の開発に取り組む。
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Causes of Carryover |
本研究課題の実施期間を延長したため、研究計画を見直した。そのため、未使用額が生じた。
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