2016 Fiscal Year Research-status Report
インスリン標的細胞に対するプラズマ効果とその治療的応用
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16K12863
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
神崎 展 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (10272262)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プラズマ医療 / 医工学 / 生活習慣病 / 細胞生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマは、固体・液体・気体の3状態とも異なる第4の状態であり、原子と電子とイオンに電離した物理的にも、化学的にも他の物質状態は見られない特性を持っている。近年開発された大気圧プラズマのユニークな特性から、プラズマを用いた生命機能調節や医療応用への展開が期待されている。研究代表者らは、特定の細胞種において「プラズマ誘導性の細胞質Ca2+上昇現象」が存在することを発見しており、本研究ではこのプラズマ誘導性の細胞応答に注目した研究を推進している。 これまでの検討から「プラズマ誘導性の細胞質Ca2+上昇現象」は3T3L1細胞において顕著に認められることから、この高感度プラズマ応答性細胞を活用することにより、生細胞に対するプラズマ作用のメカニズムの探索を行っている。H28年度は、プラズマ反応性Ca2+透過性チャネルの特性解析を達成し、TRPチャネルファミリーメンバーが重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、このチャネルの活性化を誘導していると考えられる特殊な活性種(プラズマにより産生される未知の短寿命活性種)が存在することを見出した(Sci. Rep.25728, 2016)。 さらに、3T3L1細胞は細胞分化することにより脂肪細胞となるが、脂肪分化した3T3L1細胞では「プラズマ誘導性の細胞質Ca2+上昇」のプロファイルが大きく変化することを見出した。このことから、プラズマ応答性は細胞の分化度や細胞種によって変化し、細胞の高次機能(分化・増殖やインスリン反応性など)にも影響を与える可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大気圧プラズマ刺激により良好に細胞質内Ca2+濃度([Ca2+]i)の上昇が認められる線維芽細胞(3T3L1細胞)のプラズマ応答性について、各種パラメーターを設定した上で間接照射法を用いた詳細な解析を行った。その結果、3T3L1線維芽細胞のプラズマ依存性[Ca2+]i応答はルテニウムレッド(RR)感受性及びSKF96365感受性を示すことを明らかにし、この特性からTRPチャネルファミリーが関与することが示唆された。また、プラズマ照射時間・強度・保持時間などを制御した解析より[Ca2+]i応答を惹起する物質は、プラズマ照射により溶液中に産生される各種活性種のなかでも比較的短寿命の特殊成分であり、未知のプラズマ生成短寿命活性種の存在が上記の生命応答に関与している可能性を明らかにした。また、3T3L1細胞を脂肪細胞へと分化させると、プラズマ依存性[Ca2+]i応答に変化が認められることを見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度に得られた成果に基づき、H29年度は①プラズマ作用の細胞生物学的解析と②プラズマ応答性カルシウム透過性チャネルの分子生物学的解析を推進する。具体的には、①3T3L1線維芽細胞は脂肪細胞へと分化することにより、そのインスリン反応性や代謝能が成熟する特徴があるため、未分化細胞と分化した脂肪細胞におけるプラズマ依存性[Ca2+]i応答の差異について詳しく解析する。さらに、脂肪細胞の高次機能(インスリン反応性や糖取込)に対するプラズマ作用の有無について生化学的に解析する。未分化線維芽細胞との比較検討を行うことにより、生物機能に対するプラズマ作用の多様性とその作用メカニズムについての理解を深める。②また、プラズマ依存性[Ca2+]i応答にはTRPチャネルファミリーの関与が示唆されるため、各種TRPチャネル(TRPV1, TRPV2,TRPA1, TRPC4, etc)を外来性に発現させた培養細胞を用いた分子レベルでの解析を推進する。特にTRPV1分子には活性窒素種で化学修飾されるシステイン残基が多数存在するため、各種の置換変異体を作製することにより、プラズマ応答性に対するチャネル分子構造-機能協関について明らかにする。
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Causes of Carryover |
若干の端数が残金となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度に使用予定である。
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Research Products
(29 results)