2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12865
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
長山 和亮 茨城大学, 工学部, 教授 (10359763)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 細胞バイオメカニクス / メカノバイオロジー / 細胞骨格 / 細胞核 / 細胞計測・操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管や骨などの生体組織は力学環境の変化に応じて「リモデリング」する.このリモデリングを支える細胞内要素として,収縮性細胞骨格であるストレスファイバが注目されてきた.我々は,最近,ストレスファイバには,一旦バラバラになっても自己の線維構造や配向,さらに発生する力も効率良く再現させる「構造と力の記憶」が備わる可能性に気付いた.このような個々の細胞骨格分子の記憶特性は,外乱に対する組織全体の恒常性を保つ基盤原理となっている可能性が高い.そこで本研究では,この考えを立証するために,ストレスファイバに生化学的・物理的外乱を加え分解させた後,その分子構造や張力が再現する過程を詳しく調べる.そして,細胞が如何にして自身の構造と張力を再現させるのか考察する. 研究初年度は,細胞の張力分布を正確に把握するため,これまでに確立した弾性マイクロピラー基板による張力計測を適用して,細胞形状を制御しながら,その張力分布変化を解析した.細胞のアスペクト比が高くなるにつれて,細胞張力が上昇するとともに,その方向が均一化した.しかし,アスペクト比がある値を越えると逆に張力値が減少傾向を示した.同じ実験系においてアクチンストレスファイバを化学処理で一旦脱重合させたのち復帰させたところ,張力の再現性にも同様の傾向が見られた. また,共焦点顕微鏡観察により,細胞の上面と下面のアクチンストレスファイバの配向と細胞核の配向に着目しながら,細胞のアスペクト比を変化させて培養した.細胞のアスペクト比が上昇するにつれて細胞上面のストレスファイバが発達し,細胞核も細胞の長軸方向に配向する傾向が見られた.細胞上面のストレスファイバが発達した細胞において,特に張力の再現性が高い傾向が見られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において,弾性マイクロピラー基板上で細胞の形態を調整しながら,その張力分布の変化を顕微鏡下で詳細に観察できる実験系を構築した.これを用いて,細胞のアスペクト比を調整しながら細胞張力の再現性を調べることによって,細胞張力が回復しやすくなる細胞アスペクト比を突きとめることができた.また,細胞張力の再現において,細胞の下面だけでなく上面ストレスファイバも重要な役割を果たすという新たな知見が得られた.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,細胞張力の再現性とストレスファイバの分子構造の違いに着目しながら研究を進める.特に血管平滑筋細胞においては,血清の有無などの培養環境によって収縮性マーカータンパク質であるαSMAやカルポニンなどのアクチン関連タンパク質の発現が大きく変化する.そこで,血清含有量を操作しながら,ストレスファイバの構成分子比率を操作して,個々のストレスファイバの張力再現性を調査していく.また,繰返引張刺激を負荷することでストレスファイバを強制的に配列化させた場合などに,細胞の張力再現性にどのように変化が見られるか探っていく.
|