2016 Fiscal Year Research-status Report
脂肪を燃やす褐色脂肪細胞における熱産生過程の非染色分子イメージング
Project/Area Number |
16K12866
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加納 英明 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70334240)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 綾 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50436276)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 褐色脂肪細胞 / ラマン / 非線形ラマン / CARS |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、肥満は世界的に社会問題となっており、我が国でもその割合が年々増加している。肥満は糖尿病や循環器疾患などを引き起こし、医療費の高騰にもつながるため、治療法の開発が早急な課題となっている。最近の研究により、体脂肪を減らす「褐色脂肪細胞」という細胞が注目され、肥満の予防や治療の観点から盛んに研究が行われている。しかしながら、ヒト成人における褐色脂肪細胞の研究ははじまったばかりで、細胞内におけるその特殊な脂質代謝過程の全貌は未だ明らかにはなっていない。そこで本研究では、非線形ラマン分光法を基盤とした非染色・非標識・非破壊・非侵襲 分子イメージング法を用いることで、褐色脂肪細胞の生きたまま、そのままの状態を3D可視化し、特殊な脂質代謝過程の動態を明らかにすることを目標として研究を行っている。 今年度は、褐色脂肪細胞及び通常の白色脂肪細胞の非線形及び線形ラマン分光イメージングを行い、両者の比較を行うことで以下の知見を得た。(1)共鳴ラマン効果によって褐色脂肪細胞内のミトコンドリアがコントラスト良く可視化できることがわかった。(2)脂肪滴内の脂肪不飽和度を解析したところ、白色脂肪細胞に比べて褐色脂肪細胞の方が明瞭に多くの不飽和脂質を含有していることがわかった。(3)細胞質内の分子分布を解析したところ、白色脂肪細胞に比べて褐色脂肪細胞の方が多糖類の含有量が優位に多いことがわかった。(4)細胞内脂肪滴のイメージを詳細に解析したところ、褐色脂肪細胞においてコンホメーションの異なる2種類の脂質が存在し、それらが特有の空間分布を示す可能性があることを示唆する結果が得られた。 これらのうち特に(2)の結果は、褐色脂肪細胞の特殊な脂質代謝過程と相関している可能性がある重要な知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂質の分子構造を明らかに出来るラマン分光イメージング法により、褐色脂肪細胞が多くの不飽和脂質を含有していることを明らかに出来た。これは褐色脂肪細胞が示す熱産生の機構と密接な関わりがあると予想される重要な知見である。
|
Strategy for Future Research Activity |
褐色脂肪細胞が多くの不飽和脂質を含有する機構として、不飽和化酵素の働きが相関していることが予想されるが、褐色脂肪細胞でのこの酵素の機能はまだよく分かっていない。今後、不飽和脂質に焦点を絞り、褐色脂肪細胞のエネルギー代謝との関連について研究する。
|
Causes of Carryover |
本研究は2年間で研究完了の予定で進めている。消耗品購入のため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
不飽和化酵素を用いた実験のため、試薬購入や培養関連の消耗品などを購入予定である。
|