2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12876
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
孫 安生 京都大学, 工学研究科, 特定助教 (30447924)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腸管免疫細胞 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、腸管樹状細胞の機能を新規ナノ粒子により制御することによって、アレルギー疾患の克服を目指すものである。そのためには、①腸管樹状細胞の機能解析と②新しい生体適合性マテリアルの探索および開発という2つのアプローチを同時に進めなければならない。①に関しては、アレルギー疾患と腸管樹状細胞の関連性を明らかにすることを目的としてアレルギー疾患モデルマウスの腸管から樹状細胞を単離し解析を行う。②に関しては、粘膜ワクチンのドラッグキャリアの概念を取り入れて、腸管樹状細胞に特異的に取り込まれる新しいナノ素材を探索または開発する。本申請では、これらの医学・工学の研究を融合させて、免疫応答を調節出来る新たなバイオマテリアルを作成する。 本研究の目的を達成するためには、①腸管樹状細胞の機能解析と②腸管にデリバリー可能な生体適合性ナノ粒子の開発という2つの方向から研究を進める。 ①アレルギー疾患モデルマウス(アレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーモデルマウス)の腸管から免疫細胞を単離し、マイクロアレイ法により腸管特異的に発現が変動している分子を同定し、解析を行う。 ②腸管へのドラッグキャリアとして、ナノ粒子の安定性、粒径制御性、表面電位を考慮に入れて設計を行う。 1年目では、アレルギー疾患モデルマウスからの腸管樹状細胞の単離と解析及びナノ粒子の設計と基本物性の評価を行い、2年目以降ではこれらの結果を踏まえて、in vitro, in vivoの実験をすすめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、新しい生体適合性マテリアルの探索および開発を行った。コアであるリン酸カルシウムナノ粒子 (CaP NPs) の合成は Powell らが報告した Emulsion 法を用いて行った。CaP NPs の粒径を動的光散乱法 (DLS) によって測定した結果、粒径は 5.1 nm 、 ゼータ電位は -33.9 mV であった。次に、 CaP NPs に PEI 表面修飾、FITC ラベル化 PEI 表面修飾を行い、それぞれ CaP-PEI NPs 及び CaP-PEI-FITC NPs とした。CaP-PEI NPs 及び CaP-PEI-FITC NPs の粒径をDLS で測定した結果、粒径はそれぞれ、 15.9 nm , 16.3 nm であり、ゼータ電位はそれぞれ +11.6 ± 3.3 mV , +15.7 ± 0.9 mV となった。コア粒子 CaP NPsと比較すると粒径、ゼータ電位が共に増大しており、適切に修飾が行われたと考えられる。さらに、透過型 TEM での観察を行った結果、DLSの結果と一致した像が得られた。 次に、マウスマクロファージ細胞株 RAW264.7を用いて、細胞への取り込み実験を行った。その結果、CaP NPs、CaP-PEI NPs に比べて CaP-PEI-FITC NPs のマクロファージ細胞株への取り込みは高かった 。また、細胞毒性を検討した結果、CaP-PEI NPsは高い毒性を示したが、CaP NPs、CaP-PEI-FITC NPsでは明らかな毒性はなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目では、腸管にデリバリー可能なナノ粒子の設計と合成、および基本物性の評価を中心に行った。次年度では、アレルギー疾患モデルマウスからの腸管樹状細胞の単離と解析を中心に研究を推進する予定である。まずは、卵白アルブミン(ovalbumin; OVA)を抗原として、BALB/cマウスに感作、惹起を行い高IgE血症を発症させる。それらのマウスから腸管樹状細胞を単離し、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子の発現パターンを比較する。 同定された標的分子についてsiRNAにより標的分子をノックアウトした樹状細胞について、(a) 各種刺激に対するサイトカイン産生 (b) T細胞活性化能 (c) 表面分子マーカーの発現などを検討する。ナノ粒子に関しては、 細胞内への取り込みや取り込みに要する時間または排泄にかかる時間などを調べる。さらに細胞内での局在を調べる。 また、in vitroの結果より解析された腸管樹状細胞の機能制御分子と腸管にデリバリー可能なナノ粒子を複合させて、機能性ナノ粒子を合成する。機能制御の手法としては、標的分子特異的なペプチドを合成し、ナノ粒子に付与する予定である(ペプチドの機能が経口投与により阻害されないように設計)。さらに、病態モデルマウスを用いて機能性ナノ粒子の経口投与により、病態が抑制されるかを検討する。
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