2016 Fiscal Year Research-status Report
機械負荷/電気生理相互作用の組織内不均一性に基づく虚血性心疾患病態の多階層解析
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16K12878
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
入部 玄太郎 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (90284885)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 虚血性心疾患 / 心筋メカニクス / 不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
機械的な負荷は心筋細胞の電気的な機能を修飾しており(機械負荷電気生理相互作用:mechano-electric coupling, MEC)、機械負荷環境の異なる心内膜側と心外膜側ではMECも不均一であり、さらにそれが虚血により修飾される可能性がある。そこで今年度は擬似虚血モデルを用いたMEC不均一性の検討を行った。標本としてはランゲンドルフ潅流で酵素処理したマウス左心室自由壁より心内膜側と心外膜側より単離した心筋細胞を用いた。単離した心筋細胞の両端にカーボンファイバーを装着し、カーボンファイバー位置をコンピュータ制御することにより心筋細胞長を制御測定し、カーボンファイバーのたわみ量から発生張力を測定した。通常のタイロード液から NaCNと2-deoxyglucoseを用いた疑似虚血用灌流液(ph = 6.5)にて10分もしくは15分間潅流することにより擬似虚血状態を作った。結果、収縮性の指標である収縮期末長さ張力関係(End-systolic force-length relation: ESFLR)の傾きは心内膜側細胞では低下したが心外膜側では逆に上昇する傾向を示す結果となった。また、拡張能の指標となる拡張期末長さ張力関係(End-diatolic force-length relation: EDFLR)の傾きも心内膜側で低下し、心外膜側で上昇した。また、最大収縮時間(Tmax)や90%弛緩時間(TR90)は疑似虚血によって延長したが、伸展刺激に対する反応も含めて心内膜側と心外膜側に有意な差は見られなかった。これらの結果から心筋虚血の病態として心室壁内の心筋細胞収縮機能の不均一性が増強されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた擬似虚血モデルを用いたMEC不均一性の検討に関してはほぼ予定通りの目標を達成することができた。この結果に関しての論文執筆も進んでおり、全体として予定通りに進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ上記のように順調に進んでおり、推進方策に関しては特に変更を要しない。よって、当初計画通り虚血心筋細胞の心内膜側モデルと心外膜側モデルの開発を進め、28年度実験結果の数理モデル上の再現を目指す。
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Causes of Carryover |
28年度の実験結果を2月のアメリカでの国際学会で発表する予定だったが、年度末の物品費を確保するためにこれを中止したため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度末の成果発表は次年度に延期し、未使用額はその経費にあてる。
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