2016 Fiscal Year Research-status Report
増殖因子固定化基材上でのiPS細胞のメカノトランスダクション解析と分化制御
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16K12879
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
梶原 稔尚 九州大学, 工学研究院, 教授 (10194747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水本 博 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90346817)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / 増殖因子固定化基材 / ヘパリン |
Outline of Annual Research Achievements |
増殖因子固定化ハイドロゲルの作製:増殖因子固定化可能なハイドロゲルとして、コラーゲン、ゼラチンに対して増殖因子固定化能を有するヘパリンを導入したヘパリン導入ハイドロゲルを作製した。ヘパリンの導入は、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド)/NHS(N-ヒドロキシコハク酸イミド)を架橋剤として用いることにより行った。ここで、ヘパリンの導入量、EDC/NHSによる架橋密度がゲルの力学特性に影響を与える。これらの値を変動することでゲル強度が変化することが定性的に示され、またゲル化可能な操作条件を見出した。 ハイドロゲルの増殖因子固定化能・徐放特性評価:作製したヘパリン導入コラーゲンゲル、並びにヘパリン導入ゼラチンゲルの増殖因子固定化能の評価を行った。増殖因子として、ヒトiPS細胞の増殖と分化多能性の保持に必須因子といわれている塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を用いた。まず、ヘパリン導入コラーゲンゲルへのbFGFの固定化率を評価した結果、通常のコラーゲンゲルに対して約4倍の高い固定化能が示された。次にハイドロゲルに固定化されたbFGFの徐放特性を評価した。その結果、コラーゲンゲルでは固定化したbFGFの大部分を初期に速やかに放出するのに対し、ヘパリン導入コラーゲンゲルでは期間を通じて緩徐に徐放することが可能であることが示された。さらに、徐放量についてはヘパリン導入コラーゲンゲルの高い増殖因子固定化量を反映し、コラーゲンゲルの場合と比較して高い濃度での徐放が可能であった。同様にヘパリン導入ゼラチンゲルについても通常のゼラチンゲルと比較して高い濃度でのbFGFの徐放が可能であった。以上の結果、増殖因子固定化基材としてのヘパリン導入ハイドロゲルの有用性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
増殖因子固定化ハイドロゲルの作製について、コラーゲンとゼラチンを基盤とし、ヘパリンを導入するという当初の計画の方針に沿って検討を行った。ヘパリンの導入量によってはゲル化が困難であることが見出され、ヘパリン導入量の上限値の指標を得ることができている。同時に、当初の計画通り、架橋密度によってゲル強度が変化することを定性的に確認している。また、作製したハイドロゲルの増殖因子固定化能・徐放特性能を確認し、増殖因子固定化基材としてのヘパリン導入ハイドロゲルの有用性が示された。一方、レオメーターを用いた粘弾性評価については本年度は測定の準備にとどまった。また、ハイドロゲル上での細胞培養評価については、付着率評価、機能発現についての検討をヒトiPS細胞を含めた種々の細胞で実施中である。以上のことから、当初計画に対し、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の研究実施計画に沿った検討を実施する。まず、作製したハイドロゲルの粘弾性評価として、レオメーターを用いたレオロジー測定を行う。得られた結果を元にレオロジー特性の異なる複数の条件のハイドロゲルを用いたヒトiPS細胞培養を実施し、機能評価を行う。機能評価としては当初の予定通り、まずは未分化維持条件、自発的分化誘導条件の2つの条件におけるハイドロゲルのレオロジー特性の影響を評価する。次に、特定集団への分化培養における影響を検討する。この検討については、先の自発的分化誘導条件での検討において、iPS細胞の分化傾向とレオロジー特性の関係が条件が見出されるようであれば、その関係を積極的に活用したターゲットの設定を行う予定である。
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