2016 Fiscal Year Research-status Report
非侵襲血糖値計測の信頼性改善を目的とした励起光が水信号へ及ぼす作用機序の解明
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16K12881
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
石原 康利 明治大学, 理工学部, 専任教授 (00377219)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 血糖値 / 非侵襲 / 近赤外光 / 水 / グルコース |
Outline of Annual Research Achievements |
近赤外分光法に基づく非侵襲血糖値計測システムの実用化は困難を極めている。これは、血中グルコース濃度が低く(溶媒となる生体水の濃度が高く)、かつ、グルコースと水の吸光スペクトルが重畳することに起因しており、両者を分離計測できないためである。本研究では、水の吸光ピークに対応した励起光(1450 nm)を観測光(1600 nm)に重畳しながら信号を検出することで、励起光照射が水信号の吸光度に及ぼす作用メカニズム(現象)を明らかにし、励起光照射により達成可能な水信号の分離効果を定量評価することで、1600 nmで観測された信号に占める水信号の割合を推定することを目的にしている。 これまでの基礎実験では、励起光と観測光とを直交する方向からサンプルに試料に照射した場合の励起光照射の効果を評価してきたが、平成28年度は、励起光の照射効果を改善するために、励起光・観測光を光ファイバカプラで混合してサンプルに照射する光学系を構築し、励起光照射に伴う観測光(透過光)の変化を計測することを可能とした。また、励起光照射に伴う温度上昇等の物理現象がどの程度観測光の変化に寄与しているかを評価した。 その結果、励起光強度に伴い観測光強度が変化し、数10%の変化が認められることが明らかになった。この作用メカニズムの一つとして、励起光による試料の温度上昇が考えられるが、水の吸光度の温度依存性、および、試料表面の温度上昇を評価した結果、その影響は観測光強度の変化に対して小さいことが示唆された。試料への励起光照射により、光の軌跡(ビームスポットの位置)の変化が認められているため、現在、軌跡が変化する要因について検討を続けている。また、励起光照射に伴う水の吸光スペクトル(1200 nm~1700 nmの波長成分)の変化を把握する必要のあることが指摘されたため、観測システムの構築に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた、(1)光ファイバカプラによる励起光照射のための光学系を構築し、これを用いて観測光強度の変化を実験的に示したこと、(2)励起光照射に伴う温度上昇の影響を評価したことから、当初の目標をほぼ達成したと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の実験により、励起光照射に伴う観測光の変化を観測するシステムを構築し、観測光強度が顕著に変化することを明らかにしたが、その作用メカニズムは明確になっていない。特に、励起光照射に伴う光の軌跡が変化する現象について、原因を究明する必要がある。この原因の一つとして励起光照射に伴う試料セル内の気泡状態の変化が疑われるため、寒天ファントム等を用いることで、気泡の影響が変化するかを評価するシステム、あるいは、励起光照射期間中の試料セル内の様子を可視化するシステムの構築を予定している。 また、近赤外分光装置に改良を加え、励起光照射に伴う水の吸光スペクトル変化を観測可能とし、励起光エネルギーが吸光スペクトルに及ぼす影響を検討する。 同時に、励起光照射による水の吸光スペクトルの変化を有効に利用し、水とグルコースとを高精度に分離するスペクトル処理手法を提案する。
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Causes of Carryover |
励起光照射に伴う吸光スペクトルを観測するための分光器オプション(光ファイバユニットFAP-754:日本分光、153,782円)に関して予算超過(残額20,195円)となったことから、該当品を学内予算で購入した。吸光スペクトルの観測には他の分光器オプションも必要となることから、残額を次年度へ繰越し購入費用に充当する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度予算は上記残額と合算して820,195円となるが、(1)分光器オプション(グルコース粉末計測用積分球)の購入費、(2)学会発表のための旅費等の支出を予定している。
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