2016 Fiscal Year Research-status Report
超高速リモデリングを可能とするインジェクタブルな細胞デリバリー骨充填剤
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16K12891
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩永 進太郎 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 特命助教 (70587972)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 組織工学 / バイオマテリアル / 骨再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、骨損傷部分を早期に回復可能なインジェクタブル細胞デリバリー充填剤の開発を目指している。骨充填剤は殆どがリン酸カルシウムペーストによるものであり、ある程度の強度を有しているものの、リモデリングの速度や細胞を共に充填することができないという問題点がある。そこで、細胞を内包したまま骨の主成分であるリン酸カルシウムなどの無機成分と接着可能なハイドロゲルの開発および骨細胞のカルシウム生成・沈着が促進される足場材料の開発を行い、これらの問題点の解決を試みる。 これまで、カルシウム沈着を促進する足場材料の開発として、ゼラチンに多重修飾を行った。光架橋性部位の導入により、UV照射によって速やかにハイドロゲルを作製することが可能で、更に市販の光硬化性生分解樹脂と組み合わせることで、生体親和性を担持したままゲル強度を変化させることも可能であった。 光架橋ゼラチンハイドロゲルを用いてリン酸基修飾の有無によるカルシウム沈着の違いを観測した。未修飾ゲルでは擬似体液中に2週間浸漬後もカルシウム沈着はほとんど見られなかったが、修飾ゲルでは3日浸漬後にはカルシウム結晶の沈着が確認された。次にハイドロゲル表面における骨芽細胞の培養状態を観察したところ、いずれのゲル表面でもマウス由来骨芽細胞は接着・伸展していた。細胞がコンフルエントに達した後に、分化誘導培地に置換し、細胞表面へのカルシウム沈着速度の違いを観察した。未修飾ゲルではカルシウム沈着が1週間以上必要であったのに対し、修飾ゲルではわずか1日でカルシウム沈着が確認された。 作製した多重ゼラチンと光硬化性生分解樹脂の混合溶液を用いて、マイクロ流体デバイスにより微粒子の作製を行った。微粒子は概ね150μmのサイズで作製可能で、骨芽細胞を表面に培養することで、同様にカルシウム沈着速度の極めて早い細胞デリバリーハイドロゲル材料を開発することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では(1)リン酸カルシウムなどの無機材料と接着し、かつ細胞を内包できるインジェクタブルゲルおよび(2)骨リモデリングを高速化するカルシウム沈着促進可能な細胞足場材料の2種類を開発することが重要である。そのうち、現在までに(2)の材料はほぼ目的通りに作製することができ、更にはハイドロゲルを微粒子化することで細胞が接着した状態でデリバリーするための材料としても使用可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はインジェクタブル用のハイドロゲル材料の開発に着手する。インジェクタブル用のゲルもやはり骨リモデリングの促進剤として作用する必要があるため、これまでに作製した多重修飾ゼラチンをベースとして新たに機能付与することを行っていく。また、実際に生体ラットから骨組織を採取し、これを用いて骨との接着挙動やインジェクタブル性などを評価していく予定である。
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Causes of Carryover |
所属が変更したこともあり、予定していた国際学会への参加を見送ったため、旅費にさほど費用が必要とされなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はインジェクタブルゲル材料の開発を行う予定であり、試薬等の消耗品に当てる。また、国際学会への参加を予定しているため、その旅費へ充填する。
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