2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12897
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
中村 隆範 香川大学, 医学部, 教授 (70183887)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 無血清 / FBS / アルブミン / ピルビン酸 / インスリン / 脂質 / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、動物血清に含まれる細胞増殖に関わるタンパク因子群および脂質,有機酸を、浮遊血球系細胞をモデルに同定・プロファイリングし、100%輸入牛胎児血清(FBS)に頼る、現在の細胞培養法の改善を図るものである。平成28年度は、FBSから必須のタンパク質因子群の同定と脂質,有機酸,微量元素,ホルモンの増殖効果を調べ、インスリン,トランスフェリン,亜セレン酸(ITS)とリポタンパク質(LDL, HDL)、組換えアルブミン,脂肪酸などの有効成分からなるプロト型無血清培地を構築することを主な研究実施計画とした。 (1)T細胞株(Jurkat, Molt-4)をモデルに、FBS中の増殖因子群の分析を行ったところ、増殖活性は当初の予測に反し、40-55%硫安画分(主な血清タンパク質はフェツイン)と55-80%硫安画分(主な血清タンパク質はアルブミン)に見出され、アルブミンに結合している脂質が増殖に必須であることも予想された。増殖因子については分離/精製を進めているが、現在のまでにフェツイン、アルブミンとの分離ができていない。この増殖因子は還元アルキル化、95℃の過熱、変性剤である6Mグアニジン塩酸塩などにも安定であることから低分子のペプチド性のものと予測された。(2)有機酸の中では基礎培地に添加されることの多い、ピルビン酸が無血清/低血清の場合に高い増殖促進効果を持つことがわかった。(3)脂肪酸の中ではオレイン酸が効果的で、必須脂肪酸であるαリノレン酸,リノール酸では効果より高濃度での毒性が顕著であった。微量元素については亜セレン酸以外では顕著な効果は認められなかった。(4)ホルモンについては検討できなかったが、本年度の研究成果から、ITSと組換えアルブミンあるいはBSAにコンジュゲートしたオレイン酸を含む脂肪酸、ピルビン酸からなるプロト型無血清培地のコンセプトが固まったと判断している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)本研究では、FBSから増殖因子群を同定することが一つの目標であるが現在まで成功していない。しかし、当面は無血清培地の構築には容易に入手出来る組換えインスリンを利用できる状況にある。(2)有機酸の中ではピルビン酸が無血清下の培養に有効であることが確認できたことから、無血清培地のコンセプトに加えることが妥当であると判断した。(3)脂質の中ではオレイン酸などの脂肪酸が必須であることがわかったが、これはFBS中のアルブミンと結合した状態で存在することが予測された。市販されている脂質混合物はこれまでの実験では細胞毒性が強く、アルブミンとコンジュゲートしない限り利用できないこともわかった。一方、市販の組換えアルブミンの中に脂肪酸を含むと考えられる増殖活性の高い代替品を見出せたので、当面は脂肪酸の供給源として組換えアルブミンが利用できる。(4)脂質のうちコレステロールは、T細胞株の中でJurkat細胞の増殖に必須であることがわかっていたが、今回、コレステロールの供給源として血清リポ蛋白質であるHDL,LDLに替わる代替品を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)FBS中の増殖因子群の精製を進めるとともに、FBS中のアルブミンに結合している脂肪酸の分析を進め、必須の脂肪酸の同定とその有効量の絞り込みを行う。(2)組換えインスリン、組換えトランスフェリン、亜セレン酸(ITS)、ピルビン酸、脂肪酸含有組換えアルブミン、コレステロールから構成される血清に由来しない無血清培地の最適な組み合わせ(無血清基礎培地)を検討し構築する。(3)さらに、無血清基礎培地にホルモン類を添加して、ホルモンの増殖に及ぼす効果と無血清培地に適用可能なホルモンの絞り込みを行う。(4)T細胞株以外の各種腫瘍細胞(浮遊細胞、接着細胞)や実験動物の正常細胞に対する無血清基礎培地の効果を検証する。(5)無血清基礎培地を使って、酸化LDLなど生体の動脈硬化の発症/進展に関わる細胞毒性を検証する。
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Causes of Carryover |
有機酸、脂質成分の分析のための外注費を予定していたが、新たに分析しなかったためにその費用は次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
有機酸、脂質成分の包括的な分析は当該研究室では行なえないため外注を予定していたが、高額であるために予算に見合った分析成分の絞り込みを行って、次年度に繰り越し予算を執行したいと考えている。
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