2016 Fiscal Year Research-status Report
平面と立体とを可逆変化する構造に基づいた腹腔鏡手術用臓器圧排器具の創製
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16K12908
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
角江 崇 千葉大学, 大学院工学研究科, 助教 (40634580)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 臓器圧排 / 医療器具 / ペーパークラフト / 腹腔鏡手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
腹腔鏡手術は,腹部に数mm~1cm 程度の小さな穴を開け,その穴から筒状の内視鏡(腹腔鏡)や手術用の器具類を挿入して,腹腔内の組織に対して治療を行う方式である.開腹手術と比較して,手術創を微小にでき,出血や痛みを少なくできる低侵襲性の点において有利である.しかし腹腔鏡手術においては,治療部位に関係のない臓器を押しのける圧排操作が難しいという課題がある.本研究課題では,術野を狭めることなく,かつ容易に臓器を圧排できる,腹腔鏡手術用の臓器圧排器具を新規に提案する.提案する臓器圧排器具は,平面と立体とを可逆変化する構造に基づいて設計,開発する. 平面と立体とを可逆変化する構造は,複数の展開図から構成される各平面を組み合わせることで実現できる.従来はすべて手作業にて構造を作製したため,展開図に基づいて素材を切断する際に多大な時間と労力を要していた.特に本研究では,紙だけでなくポリエチレンテレフタラート(PET)のような樹脂も素材の候補として検討している.PETをはじめとする樹脂素材は人の手による切断が容易でないものが多く,時間や労力の他に,怪我の危険性が高いことも課題であった.そこで平成28年度においては,作業の効率化,安全化を第一の課題と設定して,樹脂を切断可能なレーザ加工機を導入した.これにより,従来は臓器圧排器具一つを試作するために少なくとも1時間を要していた製作過程をわずか数分に短縮でき,大幅な効率化を実現できた.現在は試作型を量産しており,平成29年度においてその評価を実施予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究において,中空円筒型の立体形状が適しているという知見を得ているため,中空円筒型をベースにして,素材の厚み,器具の大きさ,各底面の半径と円筒部の半径がそれぞれ臓器圧排時の圧排性能,強度にどのように影響するかを検証することが目的である.平成28年度においては,作業の効率化を目的として導入したレーザ加工機により,さまざまな素材,さまざまな仕様の臓器圧排器具を試作,量産した.現在,評価実験を継続して行っている段階であり,目に見える形での成果はまだ得られていないが,研究は概ね順調に進んでいるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度において試作,量産した臓器圧排器具の評価を継続し,最終的に得られた知見から,目的とする臓器圧排器具として適した素材,仕様を選定する. 並行して,構想段階にある臓器圧排器具の挿入・展開・摘出方法について,具体的な方策を絞り込む.すべてを同時に実現する器具をいきなり試作することは難しいと考えられるため,まずは各工程を独立に考えることとし,挿入・展開・摘出方法の評価と実現可能性について検証する. 現時点ではおおむね以下のような方式を想定している.腹部に開けた穴.あるいはその穴に通した筒状の器具(トロッカ)の直径は数mm~1cm 程度である.この径に収まるほどに,平面状態の臓器圧排器具を丸めて巻き取っておき,手術時に穴またはトロッカを介して臓器圧排器具を挿入する.体内へ挿入後は,体外から手術用器具を操作して臓器圧排器具を平面状態へと復元,さらに力を加えることで立体形状へと展開する.あるいは,光や熱に反応するような形状記憶材料を利用できれば,平面から立体への変形を,外部から力を加えることなく実行できる.本研究課題で提案する臓器圧排器具により,例えば治療部位の手前側にある臓器を圧排し,かつ器具の中空円筒型を利用した内部空間によって術野も確保し,治療に必要な手術用器具を治療部位まで容易に到達可能にできる.摘出する際には,挿入時の逆に,体外から手術用器具を操作して臓器圧排器具を巻き取って取り出す.あるいは,素材として体内に安全に吸収される材料を選んでやれば,体内から取り出す手間が省けて効率的となる.上述した挿入・展開・摘出方法の一部またはすべてを満たす材料を調査,購入し,臓器圧排器具として機能するか,その性能を実証実験によって評価する.また,素材の特性に応じて挿入・展開・摘出方法としてどのようなやり方がもっとも適しているかも検証する.
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Research Products
(3 results)