2016 Fiscal Year Research-status Report
血管新生誘導効果を応用したこれまでに無い革新的な低侵襲性創傷修復法の創成
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16K12913
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
寺本 憲功 佐賀大学, 医学部, 教授 (40294912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 格士 佐賀大学, 医学部, 助教 (80762187)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ医工学 / 核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、『血管新生に深く関与する低酸素誘導因子(HIF-2α: Hypoxia-Induced Factor-2α)を特異的に抑制する制御因子(Int6)』を標的とし、これまでに全く無い新しい設計理論に基づいて作成した核酸医薬、『RNA/DNA キメラ型siRNA』を『ハイブリッド型ナノバブル』中に封入し、『ソノポレーション法(音響穿孔法)』を用い、皮膚や粘膜の創傷部周辺へ低侵襲的に本siRNAを導入し、新生微小血管を誘導させ、その結果、新たに形成された微小血行路を介して皮膚や粘膜の創傷治癒が促進されるか、否かについて遺伝子、組織および動物個体レベルで解析し、創傷治癒の期間の大幅な短縮化を目指す、これまでに無い画期的な低侵襲性創傷治癒法の創成を研究目的とする。すなわち、本申請研究は“安心”かつ“安全”な創傷修復の促進を具現化する基礎的研究である。 体液(血液や漿液)中にてRNA/DNAキメラ型siRNAが分解され難いハイブリッド・ナノバブルの完成を目指す。ボナック(株)と共同開発したRNA/DNAキメラ型siRNAとナノバブルの両者を内包し、脂質二重膜にてコートされた構造のハイブリッド・ナノバブルを作成し、体内での分解の軽減を図る。また脂質二重膜の内側は液相のため、キメラ型siRNAは長期間、安定した状態にて保存される。キメラ型siRNAが、ナノバブル中に内包されたか否かについての確認はヌクレアーゼ処理後、電気泳動法を用いたタンパク泳動度の大きさ(バンドの分子量)にて核酸の有無を判定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は毛を剥離したマウスの下肢骨格筋において強力に微小血管を誘導するRNA/DNAキメラ型siRNAを開発、精製することに成功し、ソノポレーション法による導入を行った。 さらに本研究を発展させ、健常マウスの皮膚や粘膜に対して同様にソノポレーション法にて本siRNAを導入し、骨格筋で得られた微小新生血管の誘導作用が皮膚や粘膜においても同様に観察されるか、否かについて経時的かつ定量的な解析を行いった。本キメラ型siRNAを導入後、各々の一定時間(12時間、24時間、48時間、72時間)の後、皮膚および粘膜組織の小片を採取し、本キメラ型siRNA によるInt6の選択的ノックダウン効果をreal-time PCR法およびWestern blotting法にて確認する。また同様に血管新生関連因子群(Angiopoetin 1、VEGF、bFGF 等)の発現についても遺伝子・タンパク質レベルにて検証した。しかし、マウス個体差によって管新生関連因子群(Angiopoetin 1、VEGF、bFGF 等)の発現レベルが異なり、ソノポレーション法による照射作業(照射角度、面積 等)あるいはマウス個体の状態(マウスの週齢、暴露後の組織摘出時間等)を現在、詳査中である。 今後、実験に用いるマウス個体数を増加し、その時間経過に伴う、データのばらつきを解消していく。また皮膚と骨格筋との臓器差の有無についても詳細に解析していく。現在、新たな核酸配列のsiRNAも精製済みなため、新たな配列のsiRNAでも本研究を実施している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)RNA/DNAキメラ型siRNA導入後の皮膚、粘膜における血管新生の確認 ① 新生血管に関する分子生物学的解析 本キメラ型siRNAを導入後、各々の一定時間(12時間、24時間、48時間、72時間)の後、皮膚および粘膜組織の小片を採取し、本キメラ型siRNA によるInt6の選択的ノックダウン効果をreal-time PCR法およびWestern blotting法にて確認する。また同様に血管新生関連因子群(Angiopoetin 1、VEGF、bFGF 等)の発現についても遺伝子・タンパク質レベルにて検証する。 (2)創傷モデルマウス(皮膚および粘膜層での約6 x 6 mmの全層欠損傷)を作成し、本siRNAによる血管新生効果と創傷治癒期間との関連性について遺伝子および組織レベルで解析する。① 高性能顕微鏡による皮膚修復過程の記録 ソノポレーション法によるキメラ型siRNAの皮膚・粘膜への導入前後において創傷部位の修復過程について新たに購入する高性能顕微鏡を用い、経時的にデジタル画像で記録し、その創傷治癒過程が促進されたか、否かについてsham群と比較し、観察する。さらに治癒過程の各時間経過において皮膚および粘膜組織の小片を採取し、HE染色による組織切片を作製し、一連の創傷治癒過程の病理組織画像もデジタル画像で記録し、観察する。 ② 皮膚修復因子の発現解析 採取した皮膚および粘膜組織の小片を用い、創傷治癒について皮膚修復因子である上皮細胞再生因子、例えば上皮成長因子(EGF)や 神経成長因子(NGF)の発現についてreal-time PCR法やWestern blotting法にて解析し、創傷部位の修復過程について分子生物学的に評価する。また研究が当初計画通りに進まない場合にはヌードマウス(Foxn1nu)を購入し、完全除毛された鮮明な状態で皮膚および粘膜の創傷治癒過程が観察出来るように工夫する。
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Causes of Carryover |
実験に集中し、学会出席等による旅費の大幅な削減に成功したため。 またメーカのキャンペーン促進販売を利用し、消耗品代を大幅に削減することに成功したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において残すことに成功した大切な予算を適切に予算執行していきたいと考えています。
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