2016 Fiscal Year Research-status Report
鏡視下手術支援ロボットも臓器同定が可能な可視光・不可視光同時撮像内視鏡の開発研究
Project/Area Number |
16K12915
|
Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
宮脇 富士夫 東京電機大学, 理工学部, 教授 (50174222)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 鏡視下手術支援ロボット / 器械出し看護師ロボット / 臓器同定 / 内視鏡 / 透過・遮断フィルタ / 不可視光撮像 / 可視光撮像 / キセノン光 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在研究開発中の可視光・不可視光同時撮像内視鏡は内蔵する2個の光束分割プリズムによって3つの光路に分割され、それぞれの光路の末端には可視光、紫外光、赤外光に反応する撮像素子が設置されている。可視光動画は外科医に提供され、2種類の不可視光動画はリアルタイム解析によって器械出し看護師ロボットに臓器の同定および手術進行の認識をさせるために使用する。 今年度は、光源から15 cm離れた位置に鏡を置き、鏡面から全反射されてくる強い光に対して(臨床よりも過酷な条件)、種々の条件下で実験を行った。 光源として、鏡視下外科手術で使用されるキセノン光源と市販の不可視光LED光源6種類を試した。キセノン光は、鏡面反射光の分光計測で、480~820 nmの波長は6~10万カウントの反射光量を示したが、赤外域は一般的に反射光量が多く、特に800 nm台後半から950 nmまでは20万カウント以上であった。一方、380 nm未満の紫外光は殆ど含まれていなかった。 不可視光撮像素子の前面に設置し、所望の波長域を通すフィルタとして市販品の中から5種類選び評価した。それぞれ製品仕様通りの結果が得られ、異なる波長域の赤外光を透過する3種類のフィルタは使用可能であった。280~385 nmの紫外光を透過するフィルタはその仕様から680 nmより長い波長も透過する問題があり、これを解決するため370~640 nmの波長は透過するが700~990 nmまではほぼ完全に遮断できるフィルタとの2枚組にして評価した。その結果、370~385 nmの紫外光を通し、可視光から前記の近赤外光までを遮断できることが分かったが、375 nm LED光の透過はフィルタ無しに比べて約40%低下することも分かった。しかし、そのピーク光量は約8万カウントであり、キセノン光源の可視光程度の光量は確保できており、充分使用に耐えるものと判断した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1)マルチチャネル分光器を使用した計測は種々の条件下で綿密に行ったが、不可視光撮像カメラに写る動画像の解析が赤外光撮像カメラおよび紫外光撮像カメラの故障によって、ほとんど行えていないため、研究計画は予定より遅れていると判定した。 2)カメラの故障は撮像素子自体の障害であり、原因として電流が過剰に流れたと推測され、電源系統の修理および設計変更を現在行っている。 3)フィルタは全て市販品の中から選んで評価した。選択する際に製造会社が提示しているフィルタの波長特性を調べたが、280~385 nmの紫外光を透過するフィルタは700 nmまでの情報しかなく、所有のマルチチャネル分光器(PMA - 12:浜松ホトニクス社製)で計測すると赤外光はほとんど遮断できないことが分かった。さらに、この分光器では950 nmまでしか計測できないため、それより長波長の赤外光に関しては未知となっている。 4)キセノン光を分光測定すると非常に多くの赤外光を含んでいることが分かったが、前記の計測制限のため950 nmより長波長の赤外光の情報は不明である。 5)紫外光撮像素子の前面に設置するフィルタとして280~385 nmの紫外光を透過するフィルタ単独では不十分であり、もう一つのフィルタと2枚組みにして評価したが、そのフィルタも製造会社の仕様では1,150 nmまでしか情報がなく、1,150 nmはよく通すことが分かっている。しかし、キセノン光にこの波長域の赤外光がどの程度含まれているのか前記のように現状では分からず、2枚組フィルタでもこの領域の赤外光は遮断できないため、これが紫外光撮像素子にどの程度悪影響を与えるのかという、新たな検討課題も発生した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)不可視光撮像カメラの故障への対応:高画質の撮像素子を購入して研究を続行する可能性があったため、H28年度の予算を残したが、現状の高画質の不可視光撮像カメラは非常に高価(何百万円もする)であることと、内視鏡に内蔵できるほどコンパクトでないことなどから、標準画質の紫外光撮像カメラと赤外光撮像カメラを新規に購入し直す。 2)市販のフィルタには前記のような問題点もあるため、専門業者に特注でフィルタを作製してもらう可能性を探った。しかし、1枚数十万円要するばかりでなく、実際に作ってみなければ,波長特性の詳細が不明であることから、このアプローチは当面の間断念することとした。 3)H28年度の研究によって選定した可視光遮断フィルタを内視鏡に内蔵できるように加工して組み込む作業と、新規購入する不可視光撮像カメラも内視鏡に内蔵させるための作業は専門業者に委託する必要があり、この作業に約2ヶ月かかる。この委託作業終了後に不可視光動画を種々の条件下で撮影し、当初の予定に従って未着手の研究課題を遂行する。 4)臓器同定アルゴリズム:当初の計画にはなかったが、深層学習の専門家との共同研究を行い、深層学習を用いた不可視光画像解析によって臓器の同定が可能かどうか検討する。
|
Causes of Carryover |
紫外光撮像カメラと赤外光撮像カメラを用いた研究遂行中に両方のカメラが故障したために研究が中断した。これらは標準画質の1/3インチMOSを撮像素子とするカメラであるため、もし修理不能であれば、より高画質の撮像素子を使ったカメラに変えることも考慮して、次年度に研究費を残すこととした。 結局、不可視光撮像素子が修理不能な状況に陥っていることが分かり、さらに高画質の不可視光撮像素子は予算をはるかに超えること(現状では少なくとも数百万円かかること)も分かり、標準画質の1/3インチMOSカメラを新規に購入するしか方法がないことが分かった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度の研究によって選定した可視光遮断フィルタを内視鏡に内蔵できるように加工して組み込むために必要な費用と前記の不可視光撮像カメラ新規購入費用を合算すると約100万円かかるという見積を業者から示されており、次年度に残した使用額は、これらの費用の一部にあてることになった。 不可視光撮像カメラの新規購入という想定外の費用のため、当初の研究計画では研究期間中に2回ないし3回程度予定していた内視鏡の内部の改変作業(業者に委託する必要があり、かつ高価)を1回とすることによって、予算の観点から当初の研究遂行になるべく支障を来さないようにした。
|