2016 Fiscal Year Research-status Report
慣性センサ信号に基づく3次元運動時の体重心位置軌跡の推定
Project/Area Number |
16K12948
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 高志 東北大学, 医工学研究科, 教授 (90250696)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 身体重心 / 慣性センサ / リハビリテーション / 角度 / ストライド / 歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
慣性センサ信号に基づく身体部位の角度算出法とストライド長算出法を用いて,足部位置と身体各部の角度から身体リンクモデルにより姿勢を再構成し,体重心位置を推定する方法を提案し,頭部・上肢・体幹を1つの部位とするリンクモデルを使用して,重心位置推定プログラムを作成した.また,リンクモデルの身体部分係数について,日本人を対象とする報告をもとに,歩行に対応するように導出した. 次に,提案法の原理的可能性を検証するため,3次元動作解析装置と慣性センサによる歩行の同時計測を実施し,作成したプログラムにより3次元動作解析装置の計測値(足部位置,身体部位角度)から重心位置軌跡を算出した.3次元動作計測装置で自動算出した軌跡と比較し,0.999以上の相関係数,軌跡の3成分のRMSEが0.2cm未満となり,提案方法が原理的に実現可能であることを確認した.また,重心位置の3軸成分の軌跡は過去の報告での結果と概ね同様であることも確認した.一方,慣性センサ信号からも重心位置軌跡の推定を行ったが,3次元動作解析装置で自動算出した結果と大きな誤差を生じた.その原因について検討し,身体部位ベクトルの推定における前額面内成分の誤差,ストライド軌跡の誤差が大きく影響したことを示唆する結果を得た. 4種類のリンクモデルの比較に関しては,共通の基準として床反力計で計測した圧力中心点を用いて行った.所有する3次元動作解析装置の制約があり,起立やスクワットの動作を対象とし,矢状面内の運動に近似して解析した.体幹を3分割するモデルと腸骨稜上縁で2分割するモデルが良好な推定精度を示したが,体幹部を固定すると推定精度のモデル間の差が小さくなる傾向も確認された.体幹を分割する際のセンサ装着位置については,3分割モデルの各部位に装着した慣性センサの信号から推定した角度誤差の小さい装着部位をもとに決定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慣性センサで計測した信号から,身体重心位置軌跡を推定するアルゴリズムを作成し,データの解析を可能にした.これを用いて,3次元動作計測装置と慣性センサによる歩行の同時計測を実施した結果から,提案方法の原理的実現可能性を確認した.また,慣性センサによる重心位置軌跡の推定における問題点の検討を行った結果,身体部位ベクトルの推定における前額面内成分の誤差,ストライド軌跡の誤差が大きく影響していることを示唆する結果を得た.ストライド長の推定については,これまでに検討を行ってきたが,本研究での方法ではストライド軌跡として3次元位置座標を推定する必要があり,我々はこれまでに検討していなかった部分である.そのため予備的な検討を実施した結果,センサ座標系とグローバル座標系の不整合が関係している可能性を示唆する結果が得られた.以上から検討課題を具体化し,方針を決定することができた. 身体重心位置を推定する際に,体幹部の分割の必要性が考えられたため,体幹部の2分割と3分割,分割無しの場合を検討した結果,3分割モデルと,腸骨稜上縁で2分割するモデルが同程度の精度になることを示唆する結果が得られ,実用性を考慮すると2分割が有効になることを確認した.あわせて,慣性センサの装着位置についても検討を行い,適切な部分をおおまかに決定したが,装着位置の制約や実用上の課題もある.使用した計測装置の制約から,起立動作とスクワット動作で検討を行ったが,さらに体幹部を固定した動作計測を行った結果から,圧力中心点の誤差のモデル間での差が小さくなることも確認した.そのため,歩行中であれば,体幹の上部や下部といった部位間の角度の違いが小さいことも予想されるため,体幹を1つのセグメントとしても大きな誤差を生じない可能性もあり,今後,体幹を分割しないモデルで検討を進めることも可能であることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
慣性センサによる重心位置軌跡の推定における問題点の検討結果から,身体部位ベクトルの推定における前額面内成分の誤差,ストライド軌跡の誤差が大きく影響していることを示唆する結果を得たので,それらの改善を検討する.身体部位ベクトルに関しては,これまで構築してきた方法が直進歩行を対象にしたものであったことから,カルマンフィルタによる補正方法を修正し,水平面内角度についてもある程度補正できる方法を検討する.ストライド位置軌跡の推定については,足部の姿勢(角度)を用いることから,回転行列を算出する方法について,角速度の積分に基づく方法だけではなく,クォータニオンから回転行列を算出する方法も検討する.このとき,前述の改良した角度推定法を導入する.また,加速度信号の積分区間の決定方法についても検証する.さらに,H28年度の予備的な検討から,センサ座標系とグローバル座標系の不整合が関係している可能性も確認されたので,センサ間でばらつきが生じないように校正する方法を検討する.これは,身体部位ベクトル,ストライド軌跡の両方に関係すると考えられる.以上の検討を進め,慣性センサ信号での位置軌跡推定の現実的な精度,および重心位置軌跡の利用方法を検討する. H28年度の結果から,体幹の2分割モデルの有効性を確認したが,両下肢の大腿部,下腿部,足部の計測を考えると,体幹部は1個のセンサが実用的である.H28年度に体幹を固定した場合の影響を検討し,モデル間の差が小さくなることを確認できたので,歩行時は体幹部が大きく曲がらないと考えることもできることから,当面は体幹部を分割しないモデルで検討を進める.最終的には様々な歩行条件での評価が必要になるので,歩行中の動作について体幹部を分割する必要性を合わせて検討する.また,センサ数を削減する可能性についても検討を進める.
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Causes of Carryover |
概ね当該年度の所要額は使用しており,次年度使用額がわずかに生じただけである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額はわずかではあるが,実験的検討のための謝金,学会発表のための旅費の追加等で使用する予定である.
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Research Products
(2 results)