2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12954
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
森 幹男 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (70313731)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 補聴器 / 骨伝導 / インプラント |
Outline of Annual Research Achievements |
1.骨導音受聴時における耳栓着用による知覚・単語了解度改善効果の検証:まず,歯を加振したときの最小可聴値測定を健聴者4名,難聴者1名に対して行った結果,健聴者では耳栓着用によって500~1500[Hz]の低音域で骨導音の知覚が向上する一方で,中耳以降の異常による難聴者では耳栓の有無による骨導音の知覚差が確認できないことが分かった。このことから,耳栓着用による低音域強調効果は中耳,内耳が影響していると考察した。そこで,乳様突起加振時や歯加振時に外耳道内に発生する気導音の音圧を,耳内プローブマイクロホンを用いて測定した。その結果,最小可聴値測定実験と同様に,健聴者では耳栓着用によって250~750[Hz]の低音域強調効果が乳様突起加振時・歯加振時の両方で確認できるが,難聴者では低音域強調が確認できないことが分かった。 2.骨導音受聴時における両耳聴取による単語了解度改善効果の検証:両耳聴取時および片耳聴取時の単語了解度を比較した結果,骨導音において,両耳聴取時の方が片耳聴取時よりも単語了解度が高くなる傾向があることを明らかにした。 3.気導音と骨導音の同時聴取の有効性の検証:気導音と骨導音の同時聴取の有効性を調べるため,気導音聴取時,骨導音聴取時,気導音と骨導音同時聴取時の3種類の単語了解度の比較を行い,同時聴取時に単語了解度が最も高くなる傾向があることを実験的に確かめた。 4.超磁歪振動子小型化と無線化の検討:直径2 mm長さ13 mmの超磁歪素子に,直径0.2 mmのポリウレタン銅線を直接300回巻いて作製した超磁歪振動子を用い,21~25歳の健聴者6名に対して,テレコイル受信したポピュラー音楽を2曲聴取させ,6名全員が再生した曲名をすべて言い当てられることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.骨導音受聴時における耳栓着用による知覚改善効果の解明:骨導音受聴時における耳栓着用による知覚改善効果を,乳様突起加振時と歯加振時の両方について実験的に明らかにした。また,その原因について耳内プローブマイクロホンを用いた実験を行うことによって検討した。 2.骨導音受聴時における両耳聴取による単語了解度改善効果の検証:骨導音受聴時における両耳聴取による単語了解度改善効果を明らかにした。 3.気導音と骨導音の同時聴取の有効性の検証:気導音と骨導音の同時聴取の有効性を単語了解度比較実験によって確かめた。 4.超磁歪振動子小型化と無線化の検討:従来,超磁歪振動子に用いられるコイルはボビンに銅線を巻いたボビン巻きソレノイドコイルが一般的であったが,ボビンの有無による出力の大きな差は見られなかったことから,超磁歪素子にポリウレタン線を直接巻くことで振動子の小型化することができた。しかし,バイアス用磁石や超磁歪素子を小型化した場合、出力が低下すること分かった。健聴者6名に対する,ヒヤリングループと補聴器用受信用コイルによるワイヤレス通信による音楽聴取実験で,直径2 mm長さ13 mmの超磁歪素子に,直径0.2 mmのポリウレタン銅線を直接300回巻いて試作した超磁歪素子の実用性を確認した。受信用コイルを利用した無線給電によるインプラント内二次電池充電の実現も目的としていたが,二次電池充電については,小型化の必要性から,汎用の充電制御LSIを用いることとし,独自回路の設計は行わないこととした。上記の通り,実験はほぼ順調で,達成度としてはおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,平成28年度に得られた結果を基にして,下記のことに取り組む。 1.骨導音受聴時における耳栓着用による知覚・単語了解度改善効果の検証を引き続き行う。耳内プローブマイクロホンで,耳栓着用時の耳内に発生する気導音を測定することによって,耳栓併用による効果について解明し,最適な利用法について検討する。 2.気導音と骨導音の同時聴取の有効性の検証に関する実験を引き続き行う。 3.魚眼レンズ付きアクションカメラや内視鏡を用いた口腔内撮影方法の検討と口腔内画像・映像の表示方法の検討を新たに行う。 4.超磁歪振動子小型化と無線化の検討を引き続き行う。従来,超磁歪振動子に用いられるコイルはボビンに銅線を巻いたボビン巻きソレノイドコイルが一般的であったが,ボビンの有無による出力の大きな差は見られなかったことから,超磁歪素子にポリウレタン線を直接巻くことで振動子の小型化することができた。実験に用いた超磁歪振動子は直径2 mm長さ13 mmの超磁歪素子に,直径0.2 mmのポリウレタン銅線を直接300回巻いて作製したが,銅線を細線化し,さらなる小型化・高出力化を図る。平成30年度は,平成28年度・平成29年度に得られた結果を基にして,周波数特性を骨伝導に最適化した補聴器回路の改良を行うと同時に試験的に実装し,被験者20名に対して主観評価実験を行う。得られた結果を取りまとめ,成果発表を行う。
|
Causes of Carryover |
実験補助学生の謝金が少なくて済んだのと,3月の出張を他の予算で行ったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験補助学生の謝金と出張旅費に使用する予定である。
|