2017 Fiscal Year Research-status Report
運動誤差の修正に関わる感覚運動統合の機序を脳波筋電図コヒーレンスから解明する
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16K12971
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
牛山 潤一 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (60407137)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳波 / 筋電図 / コヒーレンス / 感覚運動統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の身体運動には、運動指令の不正確性や身体システムの冗長性などによる「運動誤差」が常に伴う。そのため、感覚系はこの運動誤差情報を正確に中枢神経系にフィードバックし、運動指令を時々刻々と修正する必要がある。本研究では、こうした運動誤差の修正に関わる感覚系と運動系の統合過程を、運動皮質と筋の相動性の指標である「脳波筋電図コヒーレンス」を用いて検討する。 平成29年度は、研究1「断続的筋収縮課題中の初期運動誤差と脳波筋電図コヒーレンスの相関関係」の本実験に取り組んだ。運動初期に生じる運動誤差と脳波筋電図コヒーレンスの相関関係を検証しようというものである。計測システムの合図とともに0.5秒以内に目標張力レベルまで力を到達させたのちに力を維持する「Ballistic-and-Hold課題」、1秒ないし2秒の時間をかけてゆっくりと力を立ち上げたのち目標レベルで力を維持する「Ramp-and-Hold課題」を設定し、運動初期の運動誤差と力維持期の脳波筋電図コヒーレンスの関係性について検証している。現在のところ計13名の健常被験者を対象にこの本実験を終えている。全被験者中有意な脳波筋電図コヒーレンスが得られたのは約半数の7名であり、さらなる追実験も必要であるが、この7名に共通して、Ballistic-and-Hold課題において脳波筋電図コヒーレンスが高まること、とくに初期の運動誤差(力のオーバーシュート)が高いほどその後の脳波筋電図コヒーレンスが高まること、が示された。 現在は、上記データを補強する追加実験として、Ballistic-and-Hold課題に焦点をしぼり、ターゲットとなる力が異なる場合(5%、10%、15%MVC)の初期運動誤差の出方の違い、およびそれにともなう脳波筋電図コヒーレスの差異について検証を重ねている。現在のところ4名からのデータ収集にとどまっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1に関する追加実験の必要性が生じたため、研究2の実施が遅れている。しかし、追実験からのこれまでの傾向から、1)コヒーレンス強度には力レベルによる差異は存在しないこと、2)いずれの力レベルにおいても初期運動誤差が大きい試行ほど脳波筋電図コヒーレンスが強いこと、が示されており、「運動誤差修正」という脳と筋のシンクロニーの新たな機能的意義が導き出されつつあり、研究1に関する考察がさらに深まっているのは間違いない。データ数を整えこの考察をより深化させたうえで、すぐに研究2に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は前述の研究1の追加実験をフィニッシュまでもっていくと同時並行的に、「研究2:運動誤差修正と脳波筋電図コヒーレンスの因果関係」にとりかかる予定である。またこれまでのデータをしっかりと整理し、学会・研究会などでの発表をしていきつつ、投稿論文執筆の準備にもとりかかる。
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Causes of Carryover |
研究1に関する追加実験の必要性が生じたため、研究推進計画に当初とは若干の誤差が生じた。具体的には、平成29年度から実施予定であった研究2の開始が少々遅れている。しかし、一旦ペンディングとした研究2については、平成30年度に実施するため、とくに被験者謝金支払いや実験関連消耗品費として、当初使用予定であった費用は平成30年に使用する予定である。
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