2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12975
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
板谷 厚 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40649068)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 幼児 / 運動遊び / ごっこ遊び / 組体操 / バランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,組体操を「不安定な相手の身体とのかかわり合いの中で姿勢を維持する活動」と捉え,発達学的・体力学的観点から評価し,教材的価値を多面的に捉え直すことで,組体操の多様な行い方と評価観点を新たに提示することを目的とする. 当該年度は,当初,組体操の姿勢制御にかかわる感覚統合機能に対するトレーニング効果およびコアトレーニングとしての効果を検討するために,健康な大学生を対象者とするトレーニング実験を実施する予定であった.しかし,旭川市立保育所の要請で幼児対象の運動遊びを実施する機会に恵まれたこともあり,三年目に予定していた組体操の多様な行い方と評価観点の提示についての研究を前倒しして実施した. 組体操の多様な行い方のひとつとして運動遊びプログラム「ぼうけんくみたいそう」を開発した.「ぼうけんくみたいそう」は,ごっこ遊びの要素を強く打ち出したストーリー仕立ての組体操であった.物語の進行とともに,ひとりで行うポーズ(9種類)から2人組(5種類),3人組(2種類)へと段階的に複雑になるよう全16種類の組体操による演技を構成した.また,イメージをふくらませるために効果音や音楽を適宜用いた.組体操の効果を評価するために,保育所の年長児を対象にバランスの測定を実施した.プログラムのはじめと終わりに木のポーズ(閉眼片足立ち)を30秒間行い,その様子をビデオ撮影した.動画から30秒間の制限時間内に木のポーズを最大で何秒間維持できたかを測定した. 対応のあるt検定の結果,木のポーズ持続時間は終わりではじめよりも高い値を示した(はじめ: 8.17 ± 8.33 s, 終わり: 11.07 ± 9.01 s, P = 0.022). したがって,「ぼうけんくみたいそう」は,幼児の閉眼片足立ち時間を即時的に向上させると考えられる.また,閉眼片足立ち時間は,組体操の効果を評価する方法として有用である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,組体操を「不安定な相手の身体とのかかわり合いの中で姿勢を維持する活動」と捉え,発達学的・体力学的観点から評価し,教材的価値を多面的に捉え直すことで,組体操の多様な行い方と評価観点を新たに提示することを目的とする. 当該年度は,当初,組体操の姿勢制御にかかわる感覚統合機能に対するトレーニング効果およびコアトレーニングとしての効果を検討するために,健康な大学生を対象者とするトレーニング実験を実施する予定であった.しかし,最終年度に予定していた組体操の多様な行い方と評価観点の提示についての研究を前倒しして実施した. 予定変更の理由は,効果的で安全性が高いプログラムの開発を先行させないと学校現場での検証作業に支障が出る可能性があったからである.最終年度の研究課題である組体操の多様な行い方と評価観点の提示についての研究のために小学校で授業を実施したい旨を昨年度に打診したところ,組体操が現在の学習指導要領に記載されていないことや組体操事故が報道され,保護者が安全性に不安を抱えているため,協力は困難との返答であった.プログラムを開発し,効果測定と幼児でも問題なく実施できるほどの安全性を確認することで,学校現場の協力を得るきっかけとしたり,学校現場での検証作業の代替としたりできると考え,研究課題の前倒し実施を決断した. 上記したように研究課題の前倒しが生じた.しかし,旭川市立保育所の協力のもと,組体操プログラムを開発し,効果検証と安全性の確認を行うことができた.したがって,最終年度の研究課題をほぼ達成できたと考えられ,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
組体操の姿勢制御にかかわる感覚統合機能に対するトレーニング効果およびコアトレーニングとしての効果を検討する.このために,健康な大学生を対象者として,トレーニング群(トレーニング運動として組体操を行う)および対照群(トレーニングなし)を設定し,介入試験を実施する.対象者は三人一組で実験に参加する.実験はpre測定,トレーニング介入(対照群はトレーニング介入なし),post測定およびトレーニング効果が保持されるかどうかを確認するための保持測定の順に実施する. さらに,小学校で組体操プログラムを実施し(児童を対象としたプログラムの実施が困難であれば,小学校の教員と指導案の検討会を開催し),組体操の発達学的・体力学的観点を取り入れた行い方と評価観点について議論する.
|
Causes of Carryover |
(理由) 最終年度に予定していた研究課題を前倒し実施したため,昨年度使用予定の予算を執行しなかった. (使用計画) 実験被験者の謝金および研究発表のための旅費とする.
|
Research Products
(2 results)