2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K12994
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 裕二 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (30191456)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木島 章文 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10389083)
横山 慶子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 講師 (30722102)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 集団ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,サッカーゲームの局所的な特徴を記述する新たな変数を探索するために,Kijima et al. (European Physical Journal B, 87, 41, 2014)の勢力分布を拡張し,ボロノイ図を参考に,各選手の速度ベクトルを考慮して,ピッチ上のある地点への各選手の最小到達時間によって求められる優勢領域を求め,特にボール位置の優勢値,すなわち各時点での各選手のボール位置への到達可能時間を求め,守備側の選手の到達時間の合計を守備側の優勢値,攻撃側の選手の合計を攻撃側の優勢値とし,守備側の優勢値から攻撃側の優勢値を引いたものをボール位置の優勢値とするアルゴリズムを開発した.この値は正であれば守備側が優勢であり,負であれば攻撃側が優勢であることを示す連続量である.その結果,攻撃側がゴール前にボールを持ち込み,守備側の選手が数多くボール付近にいた場合でも,攻撃側の方が優勢となる場合があることを示す結果が得られた.このことは,ボール位置の優勢値が単にボールと各選手との距離だけでなく,攻撃側と守備側選手の動きの方向も加味した速度ベクトルを反映したものであることが示唆され,ゲームの流れのような,局所的なゲームの特徴を記述できる可能性があることを意味する.これらの結果は,日本スポーツ心理学会第44回大会で発表し,多くの参加者の興味・関心を引いた.しかしながら,今回はボールに近い各チーム6名の選手の動きから優勢値を求めたが,何名の選手を考慮すればよいのかも問題となる.また,競技経験が異なる観察者に,サッカーの試合映像の中で「良いプレー」を判断させたところ,ゴール型の競技経験者はオフ・ザ・ボールのプレーを選択し,ネット型の競技経験者はオン・ザ・ボールのプレーを選択する傾向が高かった.これは,ボールに直接関わらないプレーが,ゲームの流れを作っていることを示唆していた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は新たに局所的な特徴を記述するために,ボール位置の優勢値という状態変数を求めるアルゴリズムを開発した.この状態変数はボール近辺に位置する選手の位置と速度を反映していることから,ボールを中心とした局所的な攻守の優劣が記述できることが期待される.シュートシーンへの過程は,安定状態から不安定状態への分岐であると考えられるため,この優勢値という状態変数の時間変化からこの分岐へ至るダイナミクスが解明されることが期待される.
|
Strategy for Future Research Activity |
この優勢値を用いて,シュートシーンに至る場面の起点,すなわちボールを相手チームから奪取した地点からシュートに至るまでの優勢値の時間変化を,同じ地点でボールを奪取したにもかかわらずシュートに至らなかったシーンの優勢値の時間変化とを比較する.特に注目するのは,初期値,すなわちボール奪取時点での優勢値であり,初期値鋭敏性を示すことができれば,その後の時間変化を説明できるものと考えている.
|
Causes of Carryover |
スペインで開催された国際スポーツ心理学会(ISSP 14th world congress)での発表が,キーノートスピーカーとしての招待講演となり,旅費が学会負担となったため. ポルトガルのリスボン大学において,Araujo教授に研究レビューを受けに行くための旅費とする予定である.
|