呼吸法の違いが全身反応時間に及ぼす影響 ―剣道の打突からの検討―

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K13003
• Research Institution: Kokushikan University
• Principal Investigator: 川上 有光 国士舘大学, 政経学部, 准教授 (90439274)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 河野 寛 国士舘大学, 文学部, 准教授 (40508256) ; 田中 重陽 国士舘大学, 政経学部, 准教授 (70541001)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 呼吸相 / 呼吸法 / 反応時間 / 打撃動作

Outline of Annual Research Achievements

全身反応時間は呼吸相によって影響を受け，特に呼気中に全身反応時間は高まることが知られている。すなわち，全身反応時間が重要視される競技において，呼吸相をコントロールすることはそのパフォーマンスを高めることにつながる。そして，剣道は全身反応時間を高める必要がある代表的な競技の一つである。剣道は，相手の動きに合わせて反応することもあれば，お互いが静止した状態や剣先で牽制した状態から瞬時に打突をしたり，または竹刀を受けたり相手の技を返したりするなど様々な状況において全身反応時間を高めなければならない。そのため，剣道の試合中における呼吸相のコントロールは必須であるがその根拠は乏しく，指導場面においてそれを強調した指導はされてこなかった。そこで,まずは,剣道においても呼気中に打突動作などから評価した反応時間が高まるかどうかを確認する必要がある。
平成28年度は，呼吸相が剣道における打突反応時間に及ぼす影響を検討した。被験者は，剣道有段者13名（大学生）とした。被験者には，正面に置かれたLEDライトの点灯してから，「出鼻面」を可能な限り早く打つことを指示した。その際に，正面および右横から高速度カメラで全身を撮影し，動き出しのタイミングを膝，剣先，打突，右足の着地の4点に絞って，4／1000秒で解析した。また試技としては，自由呼吸時の呼気中および吸気中，0.25Hzでの呼吸統制時の呼気中および吸気中，無呼吸中の5つとした。
結果として，膝，剣先，打突および右足の着地のすべてのポイントにおいて，自由呼吸および統制呼吸における呼吸相の影響は認められなかった。5つの試技すべてを対応のあるt検定で統計処理したところ，自由呼吸と比較して統制呼吸時に4つのポイント全てにおいて反応時間が遅れる結果が得られた。
今後は，胸式と腹式呼吸に焦点を当て，剣道の打突における反応時間を高める呼吸法の検討を進める。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

呼吸相が剣道における反応時間に及ぼす影響を明らかにするため予備実験を含め数回に分けて実験を実施した。被験者は、剣道の熟練者で3段以上を有する大学生とし、実験においては、実験の趣旨を説明し実験参加の同意と倫理委員会の承認を得た上で実施した。本実験の撮影には、２台の高速度ビデオカメラを被験者の前方、横方向に設置して、全身８か所の筋電、地面反力などの測定を行い、呼吸器センサを胸部に張り付けて呼吸の確認を行いながら実施した。
実験試技は、被験者が呼気・吸気・無呼吸時の各10回、前方の高速度カメラ横に設置されたLEDライトの光が投影された瞬間、元立ちに対して面打撃動作を行った。呼吸については、被験者の自発呼吸とメトロノームで呼吸をコントロールする２種類の方法で実施した。

Strategy for Future Research Activity

現在、得られた実験試技のデータを解析している。呼吸相の違いによる反応速度や打撃速度、踏切や踏み込む速度、主要となる筋の反応速度など効果的な呼吸相について明らかにしたい。その上で、腹式呼吸と胸式呼吸といった呼吸法と剣道の打突における反応時間との関係について明らかにしていきたい。

Causes of Carryover

本年度は、データの保存と解析専用にＰＣを購入する予定であったが、研究協力をして頂いた研究室のＰＣおよび記憶メモリを利用させて頂き対応している。

Expenditure Plan for Carryover Budget

本年度は、専用のＰＣを購入予定である。