2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13011
|
Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
古賀 俊策 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (50125712)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 活動筋の酸素不足量 / 酸素不足の分布状態 / 時間分解近赤外分光装置法 |
Outline of Annual Research Achievements |
活動筋における酸素需要と酸素供給(つまり血流)のミスマッチによって活動筋全体の酸素不足量が増加し、運動持続時間が減少する可能性がある。そこで、ヒトの活動筋複数部位における脱酸素化ヘモグロビン濃度[HHb、酸素供給(QO2)と酸素消費(VO2)のバランス、VO2/QO2を反映]の計測を実施し、酸素不足量の分布状態を検討した。 方法:成人7名に被験者を依頼して、一定強度負荷の自転車運動時に大腿四頭筋のHHbを計測した。1)今回は、毛細血管と筋肉組織を通過する近赤外分光の光路長、散乱、吸収を実測する時間分解近赤外分光法(NIRS、浜松ホトニクス)を採用し、HHbの絶対値(振幅)を推定した。大腿四頭筋の表層部(外側広筋、内側広筋、大腿直筋)と深層部(大腿直筋の深部、中間広筋の表面)におけるHHbの分布を測定した。さらに、超音波ドップラー装置を用いて大腿表面の皮下脂肪厚を測り、HHbの値を補正した。2)肺胞の酸素摂取量を測定して活動筋全体の酸素消費動態を推定し、活動筋全体の酸素不足量を算出した。 結果と考察:1)運動開始時において活動筋深層部のHHb応答が表層筋よりも遅いので、QO2がVO2を上回り、深層筋の酸素不足は表層筋よりも少ないことが推測された。2)運動終了後の回復時においては、複数部位におけるHHbは運動時よりも減少したので、活動筋全体のQO2の減少速度はVO2よりも遅いこと(運動後過充血)が示唆された。回復時では、深層筋と表層筋のHHbは、運動終了後数分以内に運動開始前のレベルに回復した。したがって、運動中に生じた酸素不足は回復中に徐々に減少し、深層筋と表層筋の両方において酸素供給の制限はないことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表層筋と深層筋の酸素動態を計測することによって、活動筋酸素不足の空間的・時間的な不均一性が明らかになった。 現在、動物筋線維の酸素交換特性を基にして、ヒトの筋線維動員パターンをHHb、QO2、およびVO2の動的応答から推定する方法を検討している。とくに、無酸素性エネルギー供給が関与する速筋線維では、QO2が不十分になるのでVO2/QO2の比率が増加し、酸素不足が顕著になる。そこで、活動筋の酸素動態を基にして筋線維の動員パターンを推定し、複数部位における酸素不足量の空間分布との関連を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
酸素供給を増減させた条件で上記の測定を行い、酸素不足量の分布状態を検討する。さらに、活動筋酸素動態の不均一性が有酸素性持久能力に与える影響を検討する。また、深層筋の活動を促す運動様式を採用してQO2の増加と酸素需給ミスマッチの減少を促し、酸素不足量の分布状態に与える影響を検討する。
|
Causes of Carryover |
平成28年度の研究において、実験に必要な物品は既有の装置でデータを計測することが可能であった。さらに、関連学会における研究成果の発表を平成29年度に延期したので、旅費の使用は不要となり、人件費・謝金は当初の見込み額を下回った。このため、翌年度に予算を繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
酸素供給を増減させた条件で測定を行い、酸素不足量の分布状態を検討する。成人10名に被験者を依頼する。漸増負荷と一定強度負荷の自転車運動時において、下記の測定を実施する。1)前年度と同様の測定項目に加えて、活動筋全体の酸素供給量を示す大腿動脈血流量(超音波ドップラー法)を測る。2)酸素供給が低下する条件で(低酸素ガス吸入)、大腿四頭筋のHHbの空間的、および時間的な不均一性(とくに運動開始時)を検討する。3)酸素供給が増加する条件で(繰り返し運動プロトコール)、2回目運動開始時のVO2応答が速くなる(酸素不足量が減少する)原因と酸素動態の不均一性の関連を検討する。4)運動開始時における深層筋のHHb応答と有酸素性持久能力の関係について検討する。5)大腿四頭筋の複数部位におけるHHbとQ、VO2から推定される酸素不足量の不均一性、筋線維動員パターンと有酸素性持久能力の相関関係について検討する。
|