2016 Fiscal Year Research-status Report
剣道エキスパートの競技中視覚スキルの解明-遠山の目付けは存在するのか-
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16K13012
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Research Institution | Japan University of Economics |
Principal Investigator |
秋山 大輔 日本経済大学, 経済学部(福岡キャンパス), 准教授 (60751427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 悟一 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 講師 (30734149)
磯貝 浩久 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (70223055)
竹中 健太郎 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 准教授 (90506297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 剣道 / 目付け / 視線配置 / 注視点距離 / 視覚探索 / 剣道八段 |
Outline of Annual Research Achievements |
剣道において「目付け(目の働き)」は技能向上の重要な要素であるとされている.遠山の目付け(遠い山を見るように相手全体を見る)を代表とした古来より教え継がれている目付けは,古人が体験的に伝えてきた感覚的な視覚情報獲得方略であり,科学的に明らかになっていない.剣道熟練者の中でも達人とされる最高段位者(八段)や,競技実績保有者(五段から七段)には特有の視覚情報獲得方略があると予想されることから,本研究では,剣道競技中に眼球運動測定装置を用いた実験を行うことにより目付けの解明を目指す.これにより,剣道熟練者の視覚スキルが可視化され,剣道の目付け指導法の体系化を図ることが可能となることは,剣道の競技力向上に寄与できると考えられる.また,剣道同様の相手と対峙する競技においても応用が期待される.平成28年度は剣道八段受有者を被験者として実験を行い,課題実施中の眼球運動を分析した.特に(1)相手のどこを見ているのか(注視点配置),(2)遠山の目付けの教えのように,遠くを見ながら近くの相手を見ているのか(注視点距離)の2点について検討した.注視点配置においては,どの実験課題においても相手の顔面付近に注視点があり,注視点の移動が無く,周辺視を活用した目付けを行なっていることが示唆された.また,注視点距離においては,被験者間に若干の差が認められるものの,相手より5m程度奥に注視点があり,遠山の目付けが行われていることが示唆された.実験後,目付けに関するインタビュー調査を行った結果,相手の情報を認識できる視野が広く,被験者が意識している目付けと測定データの一致がみられ,剣道に適した効果的な視覚スキルを長い熟練期間で体得されたものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では,実験1として剣道八段受有者を被験者として実験を実施し,順調に進み終了した.しかし,剣道八段の受有資格が46歳以上であり,剣道有段者の約2600人に1人程度しか存在しないため,被験者の確保に時間を要し,被験者数が当初の計画より若干少なくなった.そのため,平成29年度に剣道八段の被験者が確保できるようであれば29年度計画と並行して実施することとする.結果は上述にもあるように,注視点の移動が極めて少なく,相手より奥に注視点がある剣道熟練者の目付けが示唆された.この結果については,ほぼ仮説通りであり,古来からの剣道の目付け教えを忠実に実行していると考えることができる.データの分析については予定通りの分析を実施することができたが,再度データを整理し,違う視点から示唆を得ることができないか検討する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には,実験2として剣道競技実績保有者を被験者として実験を実施する予定である.20代から30代の全日本大会レベルの入賞経験者を被験者として採用し,剣道実技中の眼球運動を測定する.実験1では被験者の確保に時間を要したが,実験2についても希少な被験者を採用予定であるため,対象とする地域を広げ,余裕を持って被験者を確保するよう努める.測定データの分析については実験1と同様の分析方法を予定しているが,実験1と実験2の被験者間の比較や,経験年数,段位,年齢によって,目付けの違いを検討する.
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Causes of Carryover |
平成28年度の直接経費において,眼球運動分析用ソフトウェア(EMR-dTarget:NAC社製)を購入した.購入金額が当初の予定より高額の972,000円となったため,残金が少額になり,研究分担者に経費を配分できなかった.この件については,購入前に研究分担者の了承を得,平成28年度に配分できなかった分を上乗せして,平成29年度に研究分担者に経費を配分することとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の残金28,000円については,平成29年度の研究分担者への経費として使用する.
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