2016 Fiscal Year Research-status Report
学校教員への最新保健研究情報提供システムの構築と評価・普及
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16K13026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 司 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (50235256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沼 久美子 女子栄養大学, 栄養学部, 准教授 (00581216)
三木 とみ子 女子栄養大学, 栄養学部, 客員教授 (80327957)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 保健研究 / 海外情報 / 英文論文 / 学校教員 / 学校保健リテラシー / 英語力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、我が国の小中高の学校教員に、学校保健に関わる海外の新しい英文研究情報を提供するシステムを構築し、学校教員が英文の最新情報に親しむ機会を提供するとともに、英文を含めた海外情報の重要性を認識し、それを吸収する力を高めてもらうことにあるようとする意識に目覚めてもらうことにある。背景には、現在わが国の研究を含めて、優れた保健研究のほとんどは英文で書かれ国際的に発信されていること、従って新しく重要な学校保健に関わる情報を得るには国際誌に掲載された英文論文の情報に接する必要があること、一方、我が国の学校教員の多くは英文で国際的に発信された情報に対する意識が低く、国内情報にのみ注意が向きがちのようである。これは時にみられる、わが国独自の間違った常識や慣行につながっている可能性もある。 この目的に向けた具体的研究活動としては、1)どのような形で海外の保健研究の情報を教員に提供するか、2)どのような内容の研究・論文を選択するか、3)和文での情報提供と同時に教員が英文そのものにも慣れ親しむ機会を提供するにはどのようにすべきかを検討する必要がある。H28年度、2)についてはまず本研究者の専門である思春期の精神保健領域から開始した。1)は、情報のまとめ方・見せ方と、その発信方法があるが、H28年度は情報のまとめ方・見せ方を大学院生とともに検討し、かつ学校教員の研究会での実際のまとめ方の例について評価してもらい、形式、文章と伝える内容のレベル等の見当を得た。3)は、教員の研究会で英文抄録の例を解説しながら実際に提示し、反応を観察したところ、大学院経験等による個人差はあるが、抄録程度の短い英文でも相当に工夫した解説が理解には必要なこと、統計知識の不足も理解困難の大きな要因であることが明らかとなった。これらの結果を踏まえてシステムの具体化をH29年度にめざす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外の研究情報をどのような形で見せるかについては、多くの試行を行い、学校教員の意見も得て、かなり見当をつける段階まで進んでいる。また、本研究の第二の目的である教員の英語力向上に資することについては、実際の教員の英文理解力の現状について観察する機会を複数会設け、検討することができた。ただし結果的に、これらに予定より多くの時間を割く必要があったため、情報の発信方法・発信システムの検討と構築についてはまだまだ不十分な状態である。また教員の英文理解の促進には、当初の予想以上の検討が必要であることが明らかとなった。すなわち英文理解補助のための解説方法と、また英文に親しむ動機づけの2つの面で、かなりの工夫を行う必要があることが明らかとなった。またこの点を慎重に扱わなければ、教員の英文情報に対する興味と親近感を高めることは難しく、むしろ拒否感を高める結果になりかねない印象を得た。これらの問題への検討には予想以上に時間を割く必要があり、情報発信方法の検討・構築まで手が回らない結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記を踏まえて、和文での情報の提示形式の一次的確定と、実際に多くの学校教員にそれを提供し、理解と親しみやすさ、関心の得やすさについて検討、さらにこれをbrush upする。なお実際に提供する情報(論文)の選択は、普段一緒に学校精神保健の研究会(日本学校精神保健研究会)を行っている学校教員と議論し、必要性の高いものでかつ興味を得られやすいものを選択する。実際の情報提供には、最終的にはwebシステムの構築が必要だが、webページの形やその宣伝方法の検討は慎重に行う必要がある。その準備が整うまでは時間がかかるので、最初の段階での情報提供は、学校保健の学会の機関誌上での公開により行い、会員の反応・評価を検討する。この学会は2000人規模の会員が所属し、かつ現場の学校教員も多数参加しているので、当初の検討には十分な条件を備えている。機関誌の編集委員会からは、掲載についての了承を既に得ている。なお抄録を中心とする英文そのものの提示とその解説方法については、一緒に研究会を行っている現場の教員の協力を得て、さらに工夫を行い確定する。これも上記機関誌での公開の際には、和文での解説とともに提示し、会員の反応・評価を検討する。これらの検討により準備を整えて、webシステムの確定とそれを用いた公開、読者の反応・評価の検討を進める。
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Causes of Carryover |
上記の通り、和文での情報提示形式と英文抄録の解説方法の検討に時間がかかり、形式・方法の完成とそのパイロット公開が遅れたため、当初H28年度に使用する予定であった情報発信とその評価システム、特にwebシステム構築の費用が使用されずに残ったこと、パイロット公開の準備のための費用(謝金等)が使用されずに残ったことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
情報提示形式と英文抄録解説方法を5月中に決定し、学会誌上でのパイロット公開の準備(文章とレイアウトの作成のための謝金支払を伴う)、公開と読者からフィードバックされる意見の検討を9月までに行う(こちらも謝金を伴う)。それが済み次第、webシステムの構築を行う。
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