2016 Fiscal Year Research-status Report
快適かつ健康な生活リズムを実現する室内照明環境制御法の開発
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16K13032
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岡野 俊行 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40272471)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光環境制御 / 照明 / ブルーライト問題 / 睡眠 / 概日時計 / 概日リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ブルーライト問題や社会的時差ボケなど、光環境が生体リズムを乱すことによる社会的損失が注目されている。本研究は、このような問題に独自の解決手段を提供すべく、研究代表者のこれまでの基礎研究の成果を踏まえて、体内時計および光に対する視覚応答の分子特性を考慮しながら、室内照明を制御するプログラムを開発し、生活リズムの安定化と健康の維持を目指している。具体的には、(1)入眠のための適切な光プロトコルの開発・改良と(2)視覚順応モデルを利用した体内時計調節のための光プロトコルの開発を進めている。 初年度は、申請書に記載の研究計画(1)に沿って研究を行い、入眠のためのプロトコルとして従来検討したプロトコルの光パターンの組み合わせの変更、ならびに色調を変えながら光パターンの検討を行なった。その結果、これまでに決定したジグザグパターンに比べて有意により眠気を引きおこすプロトコルは見いだされなかった。このことから、眠気誘発効果は照度によるところが大きく、変化パターンの観点に加えて、照度変化の知覚や色調に着目しつつ研究を進める必要性が感じられた。また、研究計画(2)に沿って、視覚の暗順応曲線に基づいた曲線的な変光プロトコルを多数作成し、被験者が感じる照度変化を経時的に記録した。その結果、興味深いことに、光量を一定にしたときよりも照度変化を感じにくいパターンが存在することがわかった。以上の実験は、予備実験として行なったものであるため、外部被験者を用いたより客観性の高いデータを得るための、実験条件の決定、実験スペースの整備と記録装置およびプログラムの開発等を完了した。 平成29年度は、上記の曲線パターンをさらに改良するとともに、十分な数の外部被験者に対して複数の独立した実験を行い、本研究の目的に即した光制御プロトコルの開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、【1】入眠のための最適な光プロトコルの開発・改良と【2】視覚順応モデルを利用した体内時計調整のための光プロトコルの開発の2つを研究課題とした。 課題【1】はこれまでの研究で、一定の成果が出ており、その有効性を初年度に検討した。その結果、眠気誘発に関してはすでに十分な効果が得られているものと考えられた。さらに有効なパターンを開発するにあたり、速い光量変化を組み合わせて強力な眠気効果をもたらすことよりも、本研究で新しく着手した課題【2】を進めることによって、より実用性の高いプロトコルが実現できることが判った。さらに、課題【2】は、当初の目的には含まれていないものの、光エネルギーの節約という重要な問題に対しても従来プロトコルよりも有効であり、本研究課題に含めていなかった副次的な効果も期待できる。初年度には、臨床実験までは至らなかったものの、最終年度に客観的に説得力のあるデータを揃えることができると十分期待できる状況であり、以上を踏まえて、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に行なったプロトコルの開発と予備実験による検討結果に基づき、当初の研究計画通り、臨床データを蓄積する。特に、視覚順応モデルによる光量変化パターンは有用であると期待されるため、概日時計への詳細な影響を検討するよりも効率的にパターン開発ができると考えられる。また、初年度の結果において、眠気の誘発効果は照度を落とすことで十分に得られることが判ったため、それも踏まえて、照度変化を感じさせずに曲線的に照度を落とすパターンの開発に集中する。これを受けて、被験者を長期に拘束する体内時計のモニタリングによる効果の検証ではなく、より短期の光パターンへの曝露実験による主観的効果の検証を多数の被験者に対して行う予定である。 これらと並行して、光量変化の主観的な認識は、光パターンに曝露される前の光環境および体内時計の時刻の影響を受けると考えられるため、光曝露前の光強度・色調および実験を行う時刻を変えての実験も試みたい。当初の計画では、HEMSへの連携を新宿実証センター内で行う予定であったが、研究代表者が常駐する先端生命医科学センター(TWIns)実験室内の整備が完了したため、TWIns内で効率的に実施する。
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Causes of Carryover |
本研究では、初年度に外部被験者への謝礼を30万円計上していた。成果に記載の通り、初年度は予備実験において、研究課題(2)において予想以上に興味深い結果が得られたたため、その結果を検証するための予備実験に集中した。そのため、2年度に外部被験者に対する実験を集中的に行うことになり、30万円を2年度に繰り越した。また、予備実験と実験室整備に集中したため、学会出張旅費と論文出版費用を2年度に繰越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に繰越す金額のうち30万円は、当初予定通りに外部被験者への謝礼に充てる予定である。残りの金額の一部は、外部発表のための旅費に充てる。また、個人情報保護のために、データ処理用のコンピュータとデータ保管用の記録媒体が必要となるため、それらの購入に充てる。
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Research Products
(1 results)