2016 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋機能の低下が認知機能やうつ症状悪化の原因となるか
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16K13047
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
三浦 進司 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10342932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守田 昭仁 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (40239653)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | キヌレニン / キヌレン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】運動がうつ症状を予防・改善することはよく知られていたが、最近その生理メカニズムが明らかになりつつある。うつの原因物質である ”キヌレニン” は、血液脳関門を介して脳内に到達するとうつ症状を引き起こすが、キヌレニン分解酵素(KAT)によってキヌレン酸に代謝されると、血液脳関門を通過できなくなる。運動トレーニングによって骨格筋で発現増加する転写調節因子「PGC-1α」は、骨格筋でのKATの発現を促進し、キヌレニンをキヌレン酸に変換させることで、慢性的なストレスによるうつ病発症を抑制することが報告された。このことから、逆に不活動などによって引き起こされる骨格筋機能の低下が、うつ症状の現れに寄与するのではないかと仮説を立てた。そこで本研究では、筋萎縮モデル動物を用いて、筋萎縮がうつ症状に与える影響を明らかにすることを目的とした。 【方法】坐骨神経を切除し後肢の筋萎縮を誘発させた「除神経マウス」を作製し、スクロース嗜好性試験によるうつ症状の評価を行い、筋萎縮が起こるとうつ症状が認められるかどうかを調べた。さらに萎縮した腓腹筋からmRNA を抽出・cDNA 逆転写後、リアルタイムPCR を用いて、KAT等の遺伝子発現量解析を行った。また、マウスにキヌレニンを投与し、血中でのキヌレニン、キヌレン酸濃度の測定を試みた。 【結果と考察】除神経マウスにおいて、萎縮した骨格筋でKATの発現量が低下していることを見出した。しかしスクロース嗜好性試験によるうつ様行動は認められず、「筋萎縮が起こるから、うつ症状が現れるわけではない」ことが明らかになった。また、キヌレニン 2 mg/kgを腹腔内投与して血中のキヌレニン濃度を測定したところ、投与後30分で血中濃度の有意な増加が認められた。一方、キヌレン酸濃度は投与1-2時間後に増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋萎縮モデルマウスでキヌレニン代謝酵素のKAT発現量が低下したことが認められた。また、血中のキヌレニンとキヌレン酸濃度の測定系が確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
萎縮した骨格筋でKATの発現量が低下していることから、筋萎縮時はストレスを受けた際の影響を受けやすく、うつ病になりやすい状態なのではないかと考えられる。そのため筋萎縮モデル動物において、慢性ストレス負荷やキヌレニン投与時によるうつ病誘発時の評価を行うことを検討している。また他の筋萎縮モデル動物でも同様に検討予定である。
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Causes of Carryover |
新規筋萎縮モデルマウスの作出に必要な機器の購入に時間がかかったこと、血中キヌレニン濃度の測定が困難であったことから、予算の執行に遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新規筋萎縮モデルマウス作出に必要な尾懸垂用飼育ケージ、血中キヌレニン濃度測定に必要なLC-MS用カラムと試薬を購入する。
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