2017 Fiscal Year Research-status Report
脂質代謝能力と身体特性・生活習慣および遺伝子との関連ー大規模コホートによる検討ー
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16K13056
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坂本 静男 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (00266032)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂質代謝能力 / インスリン抵抗性 / 遺伝子多型 / 遺伝的リスクスコア / 最大脂質酸化量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は脂質代謝能力を規定する要因および遺伝因子を明らかにすることである。脂質代謝能力とは体内の脂質をエネルギー基質として利用する能力を指し、脂質代謝能力の低値は肥満の成因の1つであるだけでなく生活習慣病の危険度やインスリン抵抗性とも関連する。脂質代謝能力の個人差には性別、身体組成、心肺体力などの「身体特性」や身体活動量、食事内容などの「生活習慣」だけでなく「遺伝因子」の関与が示唆されている。しかし、脂質代謝能力を規定する明確な遺伝子は未だ不明である。そこで我々は脂質代謝能力の低値がインスリン抵抗性と関連する点に着目し、インスリン抵抗性に関連する遺伝子多型が脂質代謝能力とも関連すると仮説立て次の検討を実施した。 40~87歳の日本人937名(男性629名、女性308名)を対象にインスリン抵抗性と強く関連する6つの遺伝子多型を解析し、遺伝的リスクスコア(insulin resistance-genetic risk score:IR-GRS)を算出した。脂質代謝能力の指標は運動負荷試験により測定した脂質酸化量の最大値(maximal fat oxidation:MFO)を用いた。MFOの値を基準に対象者を脂質代謝能力の高い群、中程度の群、低い群の3群に分け、IR-GRSと脂質代謝能力との関連を共分散分析で検討した。共変量は年齢、性別、体脂肪量、最大酸素摂取量、喫煙歴、代謝に影響する疾患の既往歴および服薬状況とした。脂質代謝能力が高い群において、脂質代謝能力が中程度の群と比べてIR-GRSは有意に低値を示したが、脂質代謝能力が高い群と低い群とではIR-GRSに違いは認められなかった。よって、インスリン抵抗性と関連する遺伝子多型は脂質代謝能力とはあまり関連しないかもしれない。今後、身体活動量や食習慣などの他の脂質代謝能力の規定要因を加えてより詳細な解析を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は肥満および肥満を基盤とした生活習慣病の発症率が高い中高年男女1000名のコホートを用いて、脂質代謝能力を規定する要因および脂質代謝能力の遺伝因子を明らかにするのが目的である。 平成29年度までに当初の研究計画通り、中高年男女1000名の測定を終えた。データ整理の遅れから、当初の予定と異なり2年目の網羅的遺伝子多型解析を平成29年度内に完了できなかったものの、すでに解析に用いる試料の選定は終えている。また、脂質代謝能力とインスリン抵抗性が関連する点より、インスリン抵抗性と関連する遺伝子多型に着目しての検討も実施した。よって研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は平成29年度までと同様に早稲田大学の卒業生を対象としたコホート研究 (WASEDA’s Health Study)と連携してデータの測定および試料の採取を引き続き行うとともに、主にこれまで測定した1000名のデータ解析を行う。 平成30年5月までに脂質代謝関連遺伝子を推定するための、網羅的遺伝子解析を実施する。すでに解析に用いる試料は選定済みである。この網羅的遺伝子解析の結果を踏まえ、脂質代謝関連遺伝子の候補遺伝子の絞り込みを行う。その後、1000名のデータを用いて候補遺伝子と脂質代謝能力との関連を検討し、脂質代謝能力を規定する遺伝子を明らかにする。 また、脂質代謝能力と性別、身体組成、心肺体力などの「身体特性」、身体活動量や食事内容などの「生活習慣」のいずれの要因が脂質代謝能力を最も規定しているかを重回帰分析により検討する。脂質代謝能力と「身体特性」「生活習慣」との関連についての結果は11月に札幌にて開催される「日本臨床スポーツ医学会」にて学会発表を行う。 平成30年10月までに完了予定の200名のデータを加えた1200名のデータを用いて、「身体特性」「生活習慣」に「遺伝因子」を含めて脂質代謝能力との関連について因子分析を用いて検討し、「身体特性」、「生活習慣」、「遺伝因子」が単独で脂質代謝能力に影響しているのか、それとも協働で影響しているのかについて明らかにし、学会発表などで得られた助言を参考に研究成果を論文としてまとめ上げる。
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Causes of Carryover |
本研究課題がデータ利用や試料採取の点で連携している早稲田大学の卒業生を対象としたコホート研究 (WASEDA’s Health Study)における実験参加者の病歴や服薬状況など代謝に関連する項目のデータ整理の遅れに伴い、遺伝子の網羅的解析に用いる試料の選定が平成29年度内に実施できなかった。そのため、遺伝子解析費用および専門家からの助言を得るための学会発表および論文投稿に掛かる費用を次年度使用として繰り越した。
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[Presentation] Autonomic regulation in physically fit and recreationally active young and older men.2017
Author(s)
Konishi, M., Kawano, H., Tabata, H., Kim, H.K., Xiang, M., Sakamoto, S.
Organizer
22nd Annual Congress of the European College of Sport Science
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[Presentation] Is there a chronic elevation in organ-tissue sleeping metabolic rate in very fit runners ?2017
Author(s)
Midorikawa, T., Tanaka, S., Ando, T., Tanaka, C., Konishi, M., Ohta, M., Torii, S., Sakamoto. S.
Organizer
22nd Annual Congress of the European College of Sport Science
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