2018 Fiscal Year Annual Research Report
Neurobiological basis of development of Japanese reading and writing
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16K13065
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋本 照男 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (40553756)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本語 / 読みの発達 / ひらがな / 漢字 / 機能的脳結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本語話者の子どもにおける読み書き能力の習熟とその神経基盤を解明することが目的であった。かなと漢字という異なる文字体系を持つ日本語の習得、習熟は特異的である可能性があり、そのメカニズムを明らかにすることは、多様な言語の習得に関して有用な示唆が期待できる。 ひらがなと漢字の読み書き能力は、個々人の習熟度の違い、つまり読み書きが得意な子と苦手な子の差が大きかった。よって、発達的変化ではなく、子どもにおけるひらがな及び漢字それぞれの読み書き能力に対応する神経基盤を検討することで、日本語の習熟に関わるメカニズムを明らかにすることを目的とした。 ひらがな漢字混じりの文章の読み流暢性(早さ)、ひらがな単語の読み流暢性と、漢字の読みの正確性を検査し、それらの得点と脳の関係を検討した。読み困難児において小脳を中心とした広い範囲で白質容量が減少しており、視覚、音韻処理といった機能を協調させた試行錯誤学習が日本語の読み発達に重要であることが示唆された(2017~2018年に成果発表)。ひらがなの読み成績が左下前頭回と左中前頭回の機能的連絡強度と関係しており、それは文字から構音への変換の熟達がひらがなの読みに関わることを示唆した。漢字の読みは、左下頭頂皮質と左右の前頭前野との連絡強度と相関しており、視覚、音韻処理に加えて意味処理の統合と制御が関わっていることが示唆された(国際的専門誌で査読中)。 これらの結果は、ひらがなと漢字の習得・習熟に異なるメカニズムが必要であり、かつ、それぞれ複数の機能が関わった複雑な処理であることを示した。2つの文字体系を習得する日本語話者の子どもは、多くの脳機能を有機的に制御することが求められており、その習熟の困難さには適切な対応、教育が必要であると考えられる。
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