2017 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設における学生ボランティア活動の実態把握と質的向上をめざした臨床研究
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16K13073
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
井上 靖子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (00331679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 喜治 龍谷大学, 文学部, 教授 (90351329)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / ボランティア / 心理臨床教育 / 子どもの養育環境 / 地域支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、3月に全国の児童養護施設598ケ所に発送した学生ボランティア活動実態把握のための質問紙調査において、返送された225施設のうち、219施設(未記入を除く)を対象として、集計を行った。これらの結果について、日本心理臨床学会第36回大会(於パシフィコ横浜)で行われた自主シンポジウム「臨床の知を生かしたボランティア活動-児童養護施設における取り組み-」で発表した。その内容は、兵庫県立大学所属の井上靖子は全国の児童養護施設の学生ボランティア活動の調査結果と考察、NPO法人3keys代表理事森山誉恵は、社会人を含めたボランティア活動の現状と課題、10代の子ども向けの相談・支援サイト「Mex」の取り組み、児童養護施設公徳学園所属の井上博晶は心理ボランティア活動の体験、社会福祉法人聖家族の家所属の辻育子はプレイセラピーボランティアの活動の現状や課題、龍谷大学所属の森田喜治は心理職の立場からボランティアの意義と課題について発表を行い、フロアーとの意見交換も行った。また、森田嘉治は9月15日~9月17日開催The 9th Asian Post-Diasters Mental Assistanceに出席し、震災ボランティアに関する情報収集、意見交換を行なう。その他、12月7日に当事者エンパワメントチーム「CVV」所属長による講演会「子どもの育ちを社会で支える-養育里親と施設退所者の居場所活動から見えること-」を実施し、施設の子ども達の現状と課題について情報共有した。また当該研究室所属の学部生が「児童養護施設における大学生のボランティアー継続的な活動にしていくためにー」を課題とした研究に取り組み、教員井上靖子の指導を受け、ボランティア活動者への調査をもとに質的研究を行ない、成果をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の目標であった3つの課題をおおむね達成している。その1つは、全国の児童養護施設600箇所から回収された219箇所の質問紙調査の集計作業を行ない、それらのデータをグラフ化して、結果の分析を行ない、一定の見解を抽出したこと、2つめは、その成果について日本心理臨床学会第36回大会で、自主シンポジウム「臨床の知を生かしたボランティア活動-児童養護施設における取り組み-」を通して、複数の専門家の間(NPO法人の代表理事、施設の心理職、大学教員)で共有し、さらに各専門家の知見や経験をもとにした、意見交換を行なえたこと、3つめは、研究代表者井上靖子が、児童養護施設3カ所(関西地区2ヶ所、中部地区1カ所 2018年2月22日、27日、4月4日)に出向き、ボランティア担当者に直接に会い、インタビュー調査を行なったことである。この点について、当初の予定であった全国の地区に対する調査まで時間が及ばなかった。理由は、学生ボランティアの先進的な取り組みをしている施設を探し出すことの難しさがあり、この点において課題を残している。こうした課題があるものの、全国の児童養護施設における学生ボランティアの実態把握ができたこと、また、プレイセラピーの学生ボランティアを、長年続けている施設のボランティア担当者から、直接に、事前指導の在り方、学生指導の現状、今後の課題など詳細を聴けたことで、学生ボランティア活動についての意義や課題について具体的考察を行なえた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、昨年度の全国の児童養護施設における質問紙調査とインタビュー調査の結果と考察を、2018年日本子ども虐待防止学会第24回学術集会おかやま大会(2018年11月30日倉敷市民会館、12月1日川崎医療福祉大学)で発表する予定である。これらの質問紙及びインタビュ―調査結果、2017年度の自主シンポジウムで発表、討論した内容について、研究報告書もしくはホームページで公開する予定にしている。特に各児童養護施設の施設長や職員らがそれらの情報を閲覧し、各施設で利用できること、さらに書籍としての出版化を最終目標としたい。研究報告書の内容は、1.全国の児童養護施設の学生ボランティア活動の実態と課題、2.ボランティア活動を通した学びの展望、3.学生ボランティア活動の質的向上のための仕組みと体制づくり、4.臨床の知からみたボランティア活動、5.その他である。
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Causes of Carryover |
全国の児童養護施設に対する質問紙調査を行った後に、各地区(沖縄地区、九州地区、関西地区、関東地区、東北地区、北海道地区等)のうち少なくとも4地区から1児童養護施設を選出し、学生ボランティア活動の質的向上のための仕組みや体制づくり、活動指針やスーパーヴィジョンの要点などを明らかにしていくための聴き取り調査を行なう予定であった。しかし、学生ボランティア活動の先進的な取り組みを行っている施設を探し出すことが困難であったため、インタビュー調査の実施が途絶えた。今回は、関西地区2ヵ所、中部地区1ヵ所にはインタビュー調査を実施したが、遠方にある地域に出かけられなかったため、旅費に経費がかからなかったためである。
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Research Products
(2 results)