2016 Fiscal Year Research-status Report
保育現場と家庭の効果的連携方法の構築―手書き連絡帳と電子連絡帳の比較を通して―
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16K13078
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
高 向山 常葉大学, 健康プロデュース学部, 准教授 (60410495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山際 勇一郎 首都大学東京, 都市教養学部, 准教授 (00230342)
梅崎 高行 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (00350439)
若尾 良徳 こども教育宝仙大学, 児童スポーツ教育学部, 准教授 (70364908)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 手書き連絡帳 / 談話分析 / 関係構築 / 発達検査 / 保育支援 / 発達支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
手書き連絡帳の言語的メッセージルールの解明のために,本年度は幼稚園で使用される出席簿の内容について談話分析を行い,日本教育心理学会第58回総会にてポスター発表を行った。結果として①年度末には要求表現を用いる傾向,②教諭からのメッセージはその語尾で「ね」を多用する特徴が年度の後半に出現しやすい傾向がみられた。幼稚園では年度の後半に生活発表会などを実施し,幼児の姿を積極的に連絡帳で保護者と共有することで家庭との関係構築が一段としやすくなると考えられる。また,言語社会心理学のアコモデーション理論によれば,メッセージの送り手は受け手に関心を持ち仲間に入れてもらおうとすれば,心理的収束(psychological convergence)が行われる。出席簿の記述におけるそれの表れ方のひとつとして,教諭が日常的に幼児に対する発話の語尾に頻出語として「ね」をつける傾向(ケアテーカー・トーク)を,家庭との関係構築がある程度できた段階で,保護者に発信する内容で方略として使用し,それによって家庭との関係構築・維持に有利に機能すると考えられる。 なお,保育所連絡帳における家庭との連携機能について80年代より行われてきた先行研究をレビューし分析手法について分類し,日本保育学会第70回大会にてポスター発表を行った。結果として4分類が得られ①意識調査は期待感および不安感や負担感,困難感などの意識や感情を明らかにするために有効な手法といえる。②定量分析は連絡帳における施設差や個人差などを明らかにするのに有効であろう。③記述内容の構成・構造化分析は保育専門家として連絡帳を記入する際には参考となり,保護者との信頼関係の形成と維持に役立てられる。④関係性分析は保育経験年数に関わらず保護者との関係構築を一層図っていくためには有効であろう。今後,保育者の自己分析でも可能とする関係性分析をメインとして研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初,調査対象の条件として健常児,発達障害児,貧困家庭児などさまざまなタイプの協力者を揃えようとしたが,当初予定していた協力者数に満たない形で研究を進めている。数を増やすより,ひとりひとりの協力者との信頼関係および関係構築に重点を置き,協力期間を延長して縦断研究データ採取に努めてきた。 また,貧困家庭からの協力は個人情報保護や記入にハンディを持つなどの観点から,極めて困難な状況であることが判明したため,今後その募集においてはさらなる工夫が求められます。
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Strategy for Future Research Activity |
手書き連絡帳の言語的メッセージルールの解明のために,引き続き縦断データの蓄積を行う。 幼稚園および保育所で使用される連絡帳の記入内容について引き続き談話分析を行い,縦断データの収集とともに言語的メッセージルールの解明に努める。また、引き続き3か月一度の保育観察および園内研修を実施し,アウトリーチ型保育支援を継続する。 目指すのは,保育年数に関わらず,新人保育者も中堅保育者も熟練保育者も保育者自身が連絡帳の自己分析を実施し,家庭との連携・関係構築に活用できるように,連絡帳の記入内容とパターンを整理し,言語的メッセージルールを明確にすることである。 さらに,手書き連絡帳のデータ採取および分析を続けながら,電子連絡帳の導入と分析を試みて,双方の比較検討を行う。
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Causes of Carryover |
①端数が発生したため。 ②分担者の移籍により研究が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度研究費と合算して使用する。
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