2018 Fiscal Year Research-status Report
保育者の環境構成の支援ツールの開発――「保育環境のアフォーダンス事典」へ向けて
Project/Area Number |
16K13079
|
Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
細田 直哉 聖隷クリストファー大学, 社会福祉学部, 准教授 (60622305)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 保育環境 / アフォーダンス / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
012歳児が保育園の環境の中で発達段階のプロセスを着実に進み、「人間らしくなる」とはどういうことか、またその発達のプロセスがどのような保育環境に支えられているのかを明らかにすることを目指した。そのため、まず「環境を通した保育」に力を入れている保育園の乳児保育室内のすべてのモノ(玩具等)とそれらのモノに関わり遊ぶ子どもの姿を写真のデータに変換した。次に、それらのモノがそれぞれどのような行為を子どもに可能にしているかという観点から分類し、1)「姿勢や移動の発達を支えるモノ」、2)「手指や道具使用の発達を支えるモノ」、3)「社会性の発達を支えるモノ」の3つのカテゴリーを見出した。さらに、それぞれのカテゴリーの中のモノが保育室の環境の中のどのような場所に配置されているか、また発達に応じてどのような順序で配置されているのかを明らかにした。その結果、1)「姿勢や移動の発達を支えるモノ」については、身体の「上から下へ」の発達の方向性に対応して、1.仰向けの姿勢で、目や耳の感覚に働きかけ、興味を引き出すモノ、2.手でつかみたいという興味を引き出し、リーチングや寝返りの発達を引き出すモノ、3.移動してもっとよく調べたいという興味を引き出し、ハイハイや歩行の発達を引き出すモノの順序を意識して配置されていること、2)「手指や道具使用の発達を支えるモノ」については、1.いじる、2.出す、3.入れる、4.並べる、5.組み合わせる、など手指の動きや興味の発達に応じて細かな段階を意識しつつ、それがやりやすいような配置が工夫されていること、3)「社会性の発達を支えるモノ」については、自分が生活の中である意味受動的な「受け手」として体験した「世話する」「食べる」などの出来事を人形を相手に能動的な「与え手」として再現できるような工夫や、役割分担が生まれやすい家具の配置などが工夫されていることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は大学業務の多忙化のため、保育園の環境内で子どもの遊びが観察できる平日昼間の時間帯に研究時間を確保することができず、観察研究や実験研究に必要な新たなデータを取ることが困難であったため、計画通りに研究を進めることができなかった。そのため、これまでのデータを分析し直したり、その分析に必要なインタビューや写真などを収集するなどの研究活動が主となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
子どもの遊びの観察・保育者へのインタビュー・活動を支える環境のリソース(アフォーダンス)を保育環境に埋め込む実験を通して、子どもの発達を支える保育環境のアフォーダンスを確定、抽出、体系化すること、最終的には「保育環境のアフォーダンス事典」として公刊できるような形へとまとめあげていくことを今後の基本方針とする。その際の重要なポイントは、一つひとつの行為を支えるアフォーダンスを列挙するような網羅的なリストをボトムアップ的に確定していくという方向性の探求と、それとは逆に「人間になる」とはどういうことかを文化人類学等や歴史人類学等、隣接諸科学の成果も参考にしつつ、トップダウン的に確定していくような方向性の探求とを同時に進めることで、保育者が実際に活用でき、その専門性を高められるような精細度のカテゴリーを見極め、本研究を現実的な保育実践の地平に着地させることを加速することである。
|
Causes of Carryover |
2018年度は大学業務の多忙化のため、保育園の環境内で子どもの遊びが観察できる平日昼間の時間帯に研究時間を確保することができず、観察研究や実験研究に必要な新たなデータを取ることが困難になってしまったため、計画通りに研究を進めることができなかった。それにより、これまでに収集したデータを分析し直したり、その分析に必要なインタビューや写真などを収集するなどの研究活動が主となり、次年度使用額が生じた。今後は、これまでの分析から導き出されたアフォーダンスに関する仮説を実際の保育環境の課題に当てはめ、それを解決するために応用できるかどうかを検証し、検証されたアフォーダンスを事典へとまとめていく段階に入る。そのため、保育環境の改善に使う様々な素材の購入やデータの効果的な収集・分析のための新たな機材の購入、また研究協力園等への旅費などに研究費を使用する予定である。
|