2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13085
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山口 潤一郎 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (00529026)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フシコクシン / 天然物合成 / シクロプロパン化 / Buchner反応 / ロジウム触媒 / ジアゾカルボニル化合物 / 全合成 / 誘導体合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
Fusicoccin A (FC-A)は、植物病原真菌の一種Fusicoccum amygdale Del. から単離・構造決定された5-8-5員環構造を有するジテルペン配糖体である。FC-Aは植物細胞膜上のH+-ATPaseを直接活性化させることが知られており、気孔の非可逆的な開口を誘起する。そのため、FC-Aを植物に対し作用させると、植物の枯死を引き起こす。気孔の開口は植物の光合成の促進など、生長に深く関わる重要因子であり、FC-Aを誘導化しその作用を制御することが可能になれば、植物の生長を促進する分子の創製に繋がる。そのためには、全合成と各種誘導体の生物活性評価による構造活性相関研究という合成化学による生物化学研究へのアプローチが必須である。本研究では新規植物生長制御分子の創製を指向し、天然物Fusicoccin A (FC-A)の全合成と各種誘導体合成および生物活性評価による構造活性相関研究を行う。類縁体を効率的に供給できるアプローチを念頭に置き、FC-Aの中心骨格である5-8-5員環の革新的合成法の開発に着手する。 本年度は、FC-Aの主骨格である5-8-5員環を有する環状化合物を合成標的とし、基本合成戦略「6員環からの8員環への環拡大反応」でその合成経路を確立を行った。すなわち、三置換ベンゼンからの連続的な環拡大反応(Buchner反応)により6員環を8員環に変換手法である。モデル化合物を市販化合物から7工程で合成し(最適化により数工程短縮する予定)、Rh(II)触媒を作用させてBuchner反応を試みた。種々検討を行ったところ、立体選択的なシクロプロパン化条件を見出し、続く中間体のジビニルシクロプロパン転位により、7員環をほぼ単一の生成物と定量的に得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FC-Aと同じtetradecahydrodicyclopenta[a,d][8]annulene三環式炭素骨格(5-8-5員環)を主骨格とする分子は天然に100種類以上存在する。この三環式炭素骨格の効率的合成法の開発を試み、現在目的の骨格の合成まで後一歩のところまで進んでいる。従って研究は概ね順調に進展しているといえる
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、三環式炭素骨格の効率的合成法を確立し、FC-Aの全合成を達成する。また、5-8-5員環の構築に関して工程数が多いためこれを最適化して簡略化する。すなわちsp3C-H結合のアリール化/環拡大反応を基軸とした反応開発に着手する。5-8-5員環だけでなく様々な炭素骨格を有する化合物群が合成できる手法を開発予定である。
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Causes of Carryover |
研究室の学生数が少ないこともあり、昨年度本研究に人員を多く尽力することはできなかった。本年はメンバーが3倍に増えたことにより、この研究を本年度より推進していく予定である。従って、昨年度分を本年度分に一部計上した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、試薬・溶媒・精製部材などを中心に利用予定である。また本研究に関わる技術補佐員の雇用費用としても本研究費を計上したい。
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Research Products
(2 results)