2016 Fiscal Year Research-status Report
脂溶性物質の細胞外分泌に関わる「脂質のバルク輸送」の解明
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16K13087
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢崎 一史 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (00191099)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 二次代謝産物 / 脂質分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等植物の生産する天然の機能性低分子は、医薬品、色素、香料等多方面で利用されるが、それらは特定の組織やオルガネラに貯まる。特にステロール類やモノテルペンなど、脂溶性物質の多くはアポプラストに分泌されて高含量で蓄積するものが多い。一般的な理解として、植物の作る多くの機能性低分子について生合成研究は著しい進展がある一方、集積の分子機構は不明な点が多く、特に脂溶性物質の輸送・蓄積の機構はブラックボックスのままである。脂質は一般に、種子等の細胞内でオイルボディーとして細胞内に蓄積される現象が良く研究されているが、「脂質の細胞外分泌機構」に関してはほとんど科学のメスが入れられていないのが実情である。しかも、一分子ずつ低分子を排出する薬剤排出ポンプのような輸送体が、これら水に不溶の脂質の細胞外分泌を担っているとは考えにくい。 そこで本研究では、脂質は膜系に包まれたバルクの状態で細胞外に分泌される、すなわち「脂質のバルク輸送」という新しい輸送機構を想定し、その仮説の検証に挑戦する。研究材料として、脂溶性物質の集積研究のモデル系であるシコニンの生産系を用い、シコニンが包まれた脂質一重膜の膜ベシクルが細胞膜と融合し、内容物をアポプラストに放出する機構に関与するタンパク質の機能解明を行う。解析手法として、毛状根の形質転換法を用いた機能解析、また輸送小胞のイメージング技術も構築する。 高い注目度のある植物脂質の分泌機構に関する最初の分子レベル解析として高いチャレンジ性があり、世界最高レベルの生産性を誇る独創的な実験系が特色である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では脂溶性代謝産物のモデルとして、薬用植物ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon Sieb. et Zucc.)の根が蓄積するナフトキノン系赤色色素シコニン誘導体の分泌機構を研究している。シコニン誘導体は脂溶性が高く、高い生産性に加え、シコニン生産が光照射でON/OFF制御を行える点、また赤色色素であるために視認が容易である点などから、脂溶性代謝産物の分泌系として本培養細胞ならびに毛状根は優れた研究モデルであると考えている。 本年度は、阻害剤処理に感受性の高いムラサキ毛状根を材料に、作用機構の異なる様々な小胞輸送阻害剤を用い、シコニンの分泌に与える影響を調べた。アクチン重合阻害剤のcytochalasin Dや小胞形成のシグナル伝達に関与するたんぱく質ARF/GEFを阻害するbrefeldin Aで処理すると、シコニン生合成活性を落とすことなく分泌のみが阻害され、シコニンはアクチンフィラメント依存的に、少なくとも一部エキソサイトーシスと共通の機構を利用して分泌されることが示唆された。また、ムラサキ培養細胞からシコニン誘導体を含む脂溶性画分を調製し、LC-MSにて脂質分析を行った。その結果、シコニンは中性脂質であるトリアシルグリセロールとともに細胞外に分泌されることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
シコニンとともに細胞外に分泌される脂質分子に関しては、データの定量化など詳細なデータを追加して、平成29年度中での論文化を目指す。 脂質分泌時における膜のダイナミクスに関しては、既にムラサキのシコニン生産系において、シコニン生産時に特異的に発現上昇してくる遺伝子、あるいは蛋白質を網羅的に取得すべく、大規模なRNA-Seq、並びにproteome 解析を行っている。これまで、それら大規模データの精査、ならびに両オミックスデータの相互対比を行うことにより、シコニン生産時特異的に、 mRNAあるいは蛋白質レベルで発現に明確な違いのあるメンバーを合計13種(トランスクリプトームから4種、プロテオームから9種)選び出した。その中には、小胞輸送系に関わると思われるタンパク質や、膜輸送体などが含まれている。 今後は、これらタンパク質を蛍光タンパク質と融合し、ムラサキ毛状根の安定形質転換系、あるいは培養細胞の一過的発現系により、シコニン輸送小胞と共存するものを見出し、その細胞内の挙動を明らかにするため、共焦点レーザー顕微鏡を用いたライブイメージング系の構築を目指す。
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[Journal Article] Characterization of shikonin derivative secretion in Lithospermum erythrorhizon hairy roots as a model of lipid-soluble metabolite secretion from plants2016
Author(s)
Tatsumi, K., Yano, M., Sugiyama, A., Sato, M., Toyooka, K., Aoyama, T., Sato, F., Yazaki, K.
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Journal Title
Frontiers Plant Sci.
Volume: 1066
Pages: 1066
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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